失業手当・住民税・国保・貯金の推移を1分で見える化

退職前にやることチェックリスト(お金編)
|退職月の選び方で手取りが変わる【2026年版】

公開日:2026年7月14日 | 最終更新:2026年8月22日

退職は「決めてから考える」と損をすることが多いイベントです。同じ会社を同じ理由で辞めるのでも、準備の有無と退職月の選び方で、手元に残るお金が数十万円変わることがあります。この記事では、退職届を出す前に確認したいお金の項目を、当サイトのシミュレーターで実際に計算した金額つきで整理しました。「なんとなく損しそう」を「いくら損するか」に置き換えるのが目的です。

この記事の要点
  • 1月1日〜4月30日の退職は、未徴収の住民税が最後の給与や退職金から強制的に一括徴収される(地方税法第321条の5第2項)。前年年収600万円で1月退職なら約12.9万円、800万円なら約18.9万円が最終給与から消える計算
  • 退職後に自分宛てに来る固定請求(住民税+国保+国民年金)は、前年年収300万円で月約4.5万円、600万円で月約7.9万円、800万円で月約10.5万円。生活費とは別枠で見積もる
  • 健康保険は、単身・自己都合なら前年年収550万円前後が任意継続と国保の損得の分かれ目。任意継続の申込期限は退職日の翌日から20日以内で、郵送なら20日以内に必着
この記事で確認すること
  1. 退職後、毎月いくら請求が来るのか
  2. 離職票の「離職理由」欄で総額は2倍変わる
  3. 退職月をずらすと最終給与はいくら変わるのか
  4. 有給は消化か買い取りか——どこまで交渉できるか
  5. 任意継続と国保、あなたはどちらが安いのか
  6. 在職中でないと通らない審査がある
  7. 受け取る書類5点と、届かないときの動き方
  8. よくある5つの誤解

1. 退職後、毎月いくら請求が来るのか

退職後の資金計画がずれる最大の原因は、これまで給与から天引きされていた住民税・健康保険料・年金が、自分宛ての請求に変わることを金額で把握していないことです。「生活費×月数」だけで見積もると、実際より2〜3割楽観的な計算になります。

次の表は、当サイトのシミュレーターと同じ計算式で「退職後に毎月出ていく固定費」だけを抜き出して試算したものです(35歳・単身・扶養なし・国民年金は令和8年度の月額17,920円)。

前年の年収住民税国民健康保険
(自己都合)
国民年金合計
(自己都合)
合計
(会社都合・軽減後)
300万円9,917円17,171円17,920円約45,000円約33,800円
450万円17,604円26,196円17,920円約61,700円約44,200円
600万円25,792円35,696円17,920円約79,400円約55,200円
800万円37,875円49,471円17,920円約105,300円約71,500円

当サイト試算。住民税・国保は全国的な平均料率による単身の概算で、実額は市区町村により異なります。「会社都合」列は非自発的失業者の軽減(前年給与所得を30%として国保を計算)を適用した場合。

読み取れることは2つあります。ひとつは、前年年収が高かった人ほど退職直後の固定費が重いこと。収入はゼロになっているのに、請求は前年の所得を基準に来るためです。もうひとつは、会社都合退職なら国保の軽減で固定費が月2〜3万円下がること。年収800万円のケースでは自己都合と会社都合で月約3.4万円、1年で約41万円の差になります。

なお、失業や所得減少を理由に住民税・国保・年金それぞれに減免・免除の制度があります。該当しそうな場合は退職後の住民税・国保・年金の手続きガイドで減免の申請先と要件を確認してください。

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2. 離職票の「離職理由」欄で、受け取れる総額は2倍変わる

失業手当は、退職理由によって受け取れる条件が大きく変わります。

自己都合会社都合(特定受給資格者)
給付開始待期7日+給付制限1ヶ月待期7日のみ
給付日数90〜150日90〜330日
国保の軽減なしあり(前年給与所得を30%として計算)

金額でいうと、月収30万円・雇用保険の加入10年という同じ条件でも、45〜59歳では自己都合120日=約76万円に対して会社都合270日=約170万円で、差は約95万円です(当サイト試算。トップページの「月収別の支給額データ」に年齢別の比較表を掲載しています)。上の表の国保軽減と合わせると、離職票の1文字で100万円以上動くことになります。

注意したいのは、形式上は自己都合でも「会社都合相当」と認定されるケースがあることです。退職前の残業が長時間に及んでいた、賃金の未払いがあった、ハラスメントを受けていた、退職を促された——こうした事情があれば、ハローワークで「特定受給資格者」として扱われる可能性があります。タイムカードや給与明細、やり取りの記録は、退職して会社のシステムにアクセスできなくなる前に手元に確保しておきましょう。

離職票−2には「離職者本人の判断」欄があり、事業主が○を付けた離職理由に対して「異議あり/異議なし」を本人が選べます。会社の記載に納得できないまま「異議なし」で出してしまうと、あとから覆すのに手間がかかります。自分の給付日数が何日になるかは失業手当の給付日数 早見表で、申請の流れは失業手当のもらい方5ステップで確認できます。

3. 退職月をずらすと、最終給与はいくら変わるのか

1〜4月退職は、住民税の残額が「強制的に」引かれる

住民税は前年の所得に対して、翌年6月から翌々年5月にかけて12回に分けて給与から天引きされる後払いの税金です。ここで効いてくるのが地方税法第321条の5第2項で、1月1日から4月30日までに退職した場合は、本人の申し出にかかわらず未徴収分を一括徴収すると定められています。6月1日から12月31日までの退職なら、一括徴収は本人が申し出た場合のみで、原則は納付書による普通徴収に切り替わります。

「数万円引かれる」と言われてもピンとこないので、金額で出しました。前年年収から住民税の年額を出し、月割額に未徴収の月数を掛けた概算です。

前年の年収住民税の年額1月退職
(5ヶ月分)
2月退職
(4ヶ月分)
3月退職
(3ヶ月分)
4月退職
(2ヶ月分)
300万円119,000円49,585円39,668円29,751円19,834円
400万円178,500円74,375円59,500円44,625円29,750円
450万円211,250円88,020円70,416円52,812円35,208円
600万円309,500円128,960円103,168円77,376円51,584円
800万円454,500円189,375円151,500円113,625円75,750円

当サイト試算(単身・給与所得のみの概算)。カッコ内の月数は、12月分までが給与から徴収済みで退職月から5月分までが未徴収である場合の月数です。実際の月数は最終給与の支払月や徴収済みの回数によって1ヶ月前後ずれることがあります。5月中の退職なら残るのは5月分のみで、通常どおり最後の給与から徴収されます。

一括徴収額が最終給与や退職金の額を超える場合は、超える分が普通徴収(自分で納付書で払う)に切り替わります。つまり「引かれなかった=払わなくていい」ではなく、あとで納付書が届くだけです。最後の給与をあてにした資金計画は避けてください。

ちなみに住民税そのものは、退職して所得が下がると翌々年度から大きく下がります。単身なら合計所得45万円以下(給与収入110万円以下)で非課税になり、高額療養費や国保の軽減が受けられます。詳しくは住民税非課税世帯になる条件で解説しています。

ボーナスは「支給日在籍要件」を先に確認する

就業規則の賞与規定を確認しましょう。「支給日在籍要件」がある会社では、支給日の前日に退職するとボーナスは1円も出ません。支給日直後の退職に比べて、数十万円の差になります。円満退職の観点からも、退職の意思表示のタイミングは賞与支給後が無難です。

あなたはどのケース?——退職月の決め方

あなたの状況退職月の考え方
就業規則に賞与の支給日在籍要件がある支給日を過ぎてから退職日を設定する。意思表示のタイミングも支給後が無難
退職月を自由に選べる/転職先は未定6月以降を選ぶ。住民税は納付書での普通徴収になり、最終給与から一括で消えない
転職先の入社日が4月などで、1〜4月退職しか選べない上の表で一括徴収額を先に把握し、その分を最終給与から差し引いた額で資金計画を立てる
5月中に退職できる残るのは5月分のみ。6月以降の分は新年度の納付書で届く
有給が20日以上残っている「最終出社日→有給消化→退職日」で組み、退職日を後ろにずらす。給与と社会保険は消化中も継続する

4. 有給は消化か買い取りか——どこまで交渉できるか

残った有給休暇は退職日までに消化するのが原則です。有給消化中も給与・社会保険は通常どおりなので、「最終出社日→有給消化→退職日」と組めば、実質的な無収入期間を短縮できます。残日数は給与明細や人事システムで確認し、退職交渉の際に消化スケジュールもセットで合意しておきましょう。

消化しきれない分について「買い取ってもらえるか」は、法律上の位置づけを知っておくと交渉しやすくなります。年次有給休暇の買い上げは、労働基準法第39条の趣旨から原則として認められません(買い上げを予約して請求できる日数を減らすことは同条違反。昭和30年11月30日基収第4718号)。ただし例外が2つあります。

例外に当たる場合でも、会社に買い取りの義務はありません。買い取り制度があるか、単価はどう計算するかは就業規則や労使の取り決め次第です。「違法だから頼めない」ではなく「頼めるが応じる義務はない」が正確な理解です。

5. 任意継続と国保、あなたはどちらが安いのか

退職後の健康保険は主に2つの選択肢があります。

この「上限32万円」があるため、退職時の月収が高かった人ほど任意継続が有利になります。協会けんぽ・東京都の令和8年度料率(健康保険9.85%+子ども・子育て支援金0.23%、40〜64歳はさらに介護1.62%)で任意継続の保険料を出し、当サイトの国保モデルと並べたのが次の表です。

前年年収/退職時の月収年齢任意継続
(月額)
国保・自己都合
(月額)
国保・会社都合
(月額)
自己都合なら
安いのは
300万円/20万円30歳20,160円17,171円5,977円国保(−2,989円)
450万円/30万円35歳30,240円26,196円8,684円国保(−4,044円)
550万円/37万円35歳32,256円32,529円10,584円ほぼ互角(−273円)
600万円/40万円45歳37,440円43,663円14,414円任意継続(−6,223円)
800万円/55万円45歳37,440円60,338円19,417円任意継続(−22,898円)
1,000万円/70万円50歳37,440円79,025円25,023円任意継続(−41,585円)

当サイト試算。任意継続は協会けんぽ・東京都の令和8年度料率と標準報酬月額の上限32万円で計算(月収は標準報酬月額の近似値として扱っています)。国保は全国的な平均料率による単身の概算で、実額は市区町村により大きく異なります。40〜64歳は介護分を含みます。

この試算では、単身・自己都合なら前年年収550万円前後が損得の分かれ目です。年収550万円あたりで国保の所得割が任意継続の上限保険料に並び、それより上では任意継続が一方的に有利になります。年収800万円のケースでは月2.3万円差、2年で約55万円の差です。

あなたはどれに当てはまる?——健康保険の選び方

当てはまる条件まず検討すべき選択肢
会社都合・特定理由離職に該当する国保。前年給与所得を30%として計算する軽減が効き、上の表でも国保が圧勝。手続きには離職票が必要
単身・自己都合で、前年年収がおおむね550万円未満国保が安くなりやすい
単身・自己都合で、前年年収がおおむね550万円以上(退職時の月収が32万円超)任意継続が安くなりやすい。標準報酬月額が32万円で頭打ちになるため
扶養している配偶者・子がいる任意継続が有利に振れやすい。被扶養者の保険料はかからないが、国保は世帯人数分の均等割がかかる
配偶者や親の健康保険の被扶養者になれる第3の選択肢。保険料の自己負担はゼロ。所得要件は退職後に扶養に入る条件で確認
どちらが安いか判断がつかない20日の期限内に、加入していた健保組合と市区町村の2か所で見積もりを取る。計算方法の詳細は任意継続と国保の保険料比較を参照
任意継続の申込期限は退職日の翌日から20日以内で、郵送の場合は20日以内に書類が到着していることが必要です(20日目が土日祝なら翌営業日)。1日でも遅れると原則として加入できません。退職前に見積もりを取っておくのが確実です。

6. 在職中でないと通らない審査がある

クレジットカードの新規作成、住宅ローンや自動車ローンの審査、賃貸物件の入居審査は、いずれも「安定収入」が前提です。退職後は審査に通りにくくなるため、予定があるなら在職中に済ませておきましょう。特に引っ越しを伴う転職・退職では、契約者の勤務先欄をどう書くかで詰まるケースが多発します。在職証明書や直近の源泉徴収票が必要になることもあるので、必要な書類は退職前に取り寄せておくと安全です。

7. 受け取る書類は5点。届かないときは会社ではなくハローワークへ

退職時・退職後に会社から受け取る書類はこの5点です。もらい忘れると各種手続きが止まります。

手続きで最も詰まりやすいのが離職票です。会社は、被保険者資格を喪失した日の翌日から10日以内に離職証明書をハローワークへ提出する義務があります(雇用保険法施行規則第7条)。それでも届かないことはあります。

ハローワークインターネットサービスには「会社から離職票が交付されない場合や、事業主が行方不明の場合等については、住居地を管轄するハローワークにお問い合わせください」と明記されています。会社と交渉して待ち続けるより、期限を過ぎたら窓口に相談するのが公式に示された道筋です。

あわせて、受給手続きの時間感覚も押さえておきましょう。求職の申込み後、失業状態にある7日間は「待期」として基本手当が支給されません。その後は原則4週間に1度の失業認定を受け、認定日から通常5営業日で指定口座に振り込まれます。受給できる期間は離職日の翌日から原則1年間なので、離職票の遅れを放置すると受給期間そのものを食いつぶします。

退職の挨拶よりも書類の確認を。「離職票はいつ届きますか」「健康保険の資格喪失証明書は発行してもらえますか」の2つは、最終出社日までに総務・人事へ必ず確認しておきましょう。

8. よくある5つの誤解

1
「6月以降に退職すれば住民税は払わなくていい」

払う金額は変わりません。変わるのは支払方法だけです。6月1日〜12月31日の退職なら未徴収分は普通徴収に切り替わり、市区町村から納付書が届きます。一括で最終給与から消えない代わりに、収入がない期間に自分で納めることになります。

2
「任意継続の保険料は必ず在職時の2倍になる」

協会けんぽの任意継続では標準報酬月額に32万円の上限があります(令和8年度も据え置き)。在職時の標準報酬月額が32万円を超えていた人は、2倍まで上がりません。月収が高かった人ほど「2倍にならない」ので、上の比較表で任意継続が有利に出るのはこれが理由です。

3
「有給の買い取りは違法だから交渉できない」

原則として買い上げは認められませんが、退職時に未消化となる分の買い上げは差し支えないとされています。時効(2年)で消滅した分の買い上げも違法ではありません。ただし会社に応じる義務はないため、「頼める。ただし断られることもある」が正確です。

4
「離職票が届かないと何も始められない」

会社には10日以内の提出義務があり、交付されない場合はハローワークに問い合わせるよう公式に案内されています。会社の対応を待つ以外の手段がないわけではありません。受給期間は離職日の翌日から原則1年で進んでいくため、待つより先に窓口へ相談したほうが有利です。

5
「退職金には税金がかからない」

退職所得控除(40万円×勤続年数、20年超は800万円+70万円×超過年数)が大きいため、結果として税額ゼロになる人が多いだけです。勤続年数が短く金額が大きい場合は課税されます。令和8年度の税制改正でも退職所得の計算方法は変わっていません。詳しくは退職金にかかる税金の計算で確認できます。

参考・出典

この記事は2026年8月時点の制度・公表情報に基づく一般的な解説です。記事内の金額はいずれも当サイトのシミュレーターと同じ計算式による概算で、賞与・有給の扱いは会社の就業規則により、住民税・国民健康保険料はお住まいの市区町村により、任意継続の保険料は加入している健康保険(協会けんぽか健康保険組合か)と都道府県により異なります。最終的な金額は、ハローワーク・市区町村の窓口・加入中の健康保険組合・年金事務所でご確認ください。