退職金にかかる税金はいくら?
|退職所得控除の計算方法をわかりやすく解説【2026年版】
退職金には所得税・住民税がかかりますが、給与よりもかなり優遇された計算方法(分離課税+退職所得控除+1/2課税)が使われています。とはいえ、勤続年数や受け取り方によって手取りは変わりますし、2026年からはiDeCoなど確定拠出年金を受け取っている人向けの改正も始まっています。この記事では、まず勤続年数と金額の組み合わせごとの手取りを示し、そのあとで計算の仕組みと、確定申告をしたほうがいい人を見分ける方法を説明します。
- 退職金は分離課税で「退職所得控除を引いた残りの1/2にだけ課税」される優遇された仕組み。控除額の範囲内なら税金はかからない
- 勤続10年・1,000万円なら税金は所得税・住民税あわせて約51万円で、手取りは約949万円。勤続30年・2,000万円なら税金は約41万円(退職金の約2%)
- 勤続5年以下と20年以下は境目。勤続5年・800万円と6年・800万円では、税金が約47万円違う
- 「退職所得の受給に関する申告書」を会社に出さないと一律20.42%が源泉徴収される(確定申告で精算可能)。出していても、年の前半に辞めた人は確定申告で所得税が戻ることがある
- 勤続年数×退職金額ごとの手取り早見表
- 退職所得控除はいくら?(勤続年数別)
- 控除を引いた残りはどう課税される?
- 辞める時期が1年違うと税金はどれだけ変わる?
- 申告書を出し忘れたら?
- 退職した年は確定申告で所得税が戻ることがある
- 住民税はいくら引かれる?
- 確定申告は必要?状況別の早見表
- 退職金の税金でよくある5つの誤解
- 2026年施行のiDeCo・企業型DCの改正点
勤続年数と金額で、手取りはいくらになる?
当サイトが国税庁の計算方法(退職所得控除→1/2課税→所得税の速算表)で、勤続年数と退職金額の組み合わせごとに税額を計算した結果です。いちばん右の列は、トップページの退職シミュレーターの「退職金など一時収入(手取り額)」欄にそのまま入れられる金額です。
| 勤続年数 | 退職金(額面) | 退職所得控除 | 課税される退職所得 | 所得税 | 住民税 | 手取り | シミュレーターに入れる額 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 3年 | 100万円 | 120万円 | 0円 | 0円 | 0円 | 100万円 | 100万円 |
| 5年 | 300万円 | 200万円 | 50万円 | 25,525円 | 50,000円 | 2,924,475円 | 292万円 |
| 10年 | 500万円 | 400万円 | 50万円 | 25,525円 | 50,000円 | 4,924,475円 | 492万円 |
| 10年 | 1,000万円 | 400万円 | 300万円 | 206,752円 | 300,000円 | 9,493,248円 | 949万円 |
| 15年 | 800万円 | 600万円 | 100万円 | 51,050円 | 100,000円 | 7,848,950円 | 784万円 |
| 20年 | 1,500万円 | 800万円 | 350万円 | 278,222円 | 350,000円 | 14,371,778円 | 1,437万円 |
| 25年 | 1,500万円 | 1,150万円 | 175万円 | 89,337円 | 175,000円 | 14,735,663円 | 1,473万円 |
| 30年 | 2,000万円 | 1,500万円 | 250万円 | 155,702円 | 250,000円 | 19,594,298円 | 1,959万円 |
| 38年 | 2,500万円 | 2,060万円 | 220万円 | 125,072円 | 220,000円 | 24,654,928円 | 2,465万円 |
| 38年 | 3,000万円 | 2,060万円 | 470万円 | 523,262円 | 470,000円 | 29,006,738円 | 2,900万円 |
前提:役員ではない人の退職金で、「退職所得の受給に関する申告書」を提出済み、ほかに同じ年や過去に受け取った退職金・iDeCo等の一時金はなし。所得税は復興特別所得税(2.1%)込み、住民税は市町村民税6%・道府県民税4%を別々に計算。金額は計算のための例示で、退職金の相場を示すものではありません。
表から読み取れるのは、同じ1,500万円でも勤続20年と25年では税金が約36万円違う(628,222円と264,337円)ことです。税額を決めるのは退職金の額そのものより、「控除額をどれだけ超えたか」です。多くのケースで税金は退職金の1〜5%程度に収まり、控除額を大きく超えたときだけ負担が重くなります。
退職所得控除はいくら?——勤続年数だけで決まる
退職所得控除額は勤続年数によって次のように計算します(1年未満の端数は1年に切り上げ)。
- 勤続20年以下:40万円 × 勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)
- 勤続20年超:800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 5年 | 200万円 |
| 10年 | 400万円 |
| 15年 | 600万円 |
| 20年 | 800万円 |
| 25年 | 1,150万円 |
| 30年 | 1,500万円 |
| 35年 | 1,850万円 |
| 38年 | 2,060万円 |
給与と違って退職金の税金が軽いのは、退職金が長年の勤労への報償で老後の生活資金でもあることから、ほかの所得と切り離して計算する分離課税とされ、そのうえ退職所得控除と1/2課税という二段の軽減があるためです。
控除を引いた残りはどう課税される?——原則は1/2
実際に課税対象となる「退職所得の金額」は、原則として次の式で計算します。
退職所得の金額 =(退職金の収入金額 − 退職所得控除額)× 1/2
計算例:勤続30年・退職金2,000万円の場合
- 退職所得控除額:1,500万円(上の表のとおり)
- 退職所得の金額:(2,000万円 − 1,500万円)× 1/2 = 250万円
2,000万円受け取っても、課税対象になるのは250万円だけということになります。この250万円に対して、通常の所得税の税率表(超過累進税率)と復興特別所得税(2.1%)を適用して所得税額を計算し、住民税は後述の方法で別途計算します。
辞める時期が1年違うと、税金はどれだけ変わる?
勤続年数は1年未満の端数を1年に切り上げて数えます。在籍期間が5年を1日でも超えれば勤続6年、19年を1日でも超えれば勤続20年です。この切り上げと、上で説明した「勤続5年以下」「勤続20年超」の2つの境目が重なるところで、税額が大きく動きます。退職金の額を同じにして、勤続年数だけを変えて計算しました。
| 退職金 | 勤続年数 | 退職所得控除 | 課税される退職所得 | 税金の合計 | 1年前との差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 800万円 | 5年 | 200万円 | 450万円 (300万円超の部分は1/2にならない) | 932,422円 | ― |
| 800万円 | 6年 | 240万円 | 280万円 | 466,332円 | 約47万円少ない |
| 1,000万円 | 19年 | 760万円 | 120万円 | 181,260円 | ― |
| 1,000万円 | 20年 | 800万円 | 100万円 | 151,050円 | 約3万円少ない |
| 1,000万円 | 21年 | 870万円 | 65万円 | 98,182円 | 約5万円少ない |
税金の合計は所得税(復興特別所得税込み)と住民税の合計。前提は手取り早見表と同じです。
差がいちばん大きいのは勤続5年と6年の境目です。勤続5年以下の退職金(短期退職手当等)は、控除後の金額のうち300万円を超える部分が1/2にならないため、控除後の金額が300万円を超える退職金を受け取る人ほど影響が出ます。勤続20年の境目は、21年目以降の控除が年70万円に増えるという形で効いてきます。
「退職所得の受給に関する申告書」を出し忘れたら?
退職金を受け取る際は、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出するのが原則です。これを提出すれば、勤務先が退職所得控除や1/2課税を反映した正しい税額を計算して源泉徴収してくれるため、多くの場合は確定申告が不要になります。
申告書を出していても、退職した年は確定申告で戻ることがある
ここまでの説明どおり、申告書を出していれば源泉徴収だけで完結します。ただし年の途中で退職した人には、確定申告をすると退職金の源泉所得税が戻ってくるケースがあります。あまり知られていない仕組みなので、順を追って説明します。
勤務先が源泉徴収する際に反映されるのは、退職所得控除と1/2課税だけです。基礎控除や社会保険料控除といった所得控除は一切反映されていません。一方で所得税法第87条は、所得控除を「総所得金額から差し引き、引ききれない残額は退職所得金額から差し引く」という順序で使うと定めています。
ここで効いてくるのが、退職した年は給与収入が中途半端に少ないという事情です。1年分の給与がないので所得控除を使い切れず、余った控除が退職所得のほうへ回ります。ところが源泉徴収の時点ではその分が引かれていないため、確定申告をして初めて精算され、差額が還付されるというわけです。
2026年に退職した人は、戻る額が去年までより増えます
令和8年度税制改正(令和8年分以後の所得税に適用)で基礎控除が最大104万円に引き上げられたため、「余る所得控除」そのものが大きくなりました。同じ条件で改正前後を比べます。
| 項目 | 2025年に退職(令和7年分) | 2026年に退職(令和8年分) |
|---|---|---|
| 退職所得(退職金1,000万円・勤続10年) | 300万円 | 300万円 |
| 1〜3月の給与収入100万円 → 給与所得 | 35万円 | 26万円 |
| 基礎控除 | 88万円 | 104万円 |
| 社会保険料控除(退職後に払った国保・国民年金) | 25万円 | 25万円 |
| 給与所得で使い切れず余る控除 | 78万円 | 103万円 |
| 課税退職所得(余った控除を差し引いた後) | 222万円 | 197万円 |
| 源泉徴収された所得税 | 206,752円 | 206,752円 |
| 確定申告後の税額 | 127,114円 | 101,589円 |
| 還付される金額 | 約79,600円 | 約105,100円 |
当サイトが国税庁の速算表と令和8年度税制改正後の控除額に基づいて試算した概算です。扶養控除・生命保険料控除・医療費控除などがある場合は、余る控除がさらに増えて還付額も大きくなります。給与から源泉徴収されていた所得税がある場合は、それも別途還付の対象になります。
どんな人が戻る?——給与収入が少ないほど大きい
還付されるかどうかは、退職した年の給与収入で所得控除を使い切ってしまうかどうかで決まります。給与が多い年に辞めた人は控除が余らないので、戻りません。
| 退職した年の給与収入 | 退職金・勤続年数 | 余る控除 | 還付される金額 |
|---|---|---|---|
| 100万円(3月末退職) | 1,000万円・10年 | 103万円 | 約105,100円 |
| 150万円(5月末退職) | 600万円・10年 | 53万円 | 約27,000円 |
| 200万円(6月末退職) | 1,000万円・10年 | 3万円 | 約3,000円 |
| 200万円(6月末退職) | 2,000万円・25年 | 0円 | 0円(戻らない) |
社会保険料は25〜30万円として試算。年の後半まで働いた人ほど給与で控除を使い切るため、還付は小さくなります。
住民税はいくら引かれる?——退職所得の一律10%
退職所得には住民税(市町村民税6%+道府県民税4%=合計10%)もかかります。所得税と同じ「(収入金額−退職所得控除額)×1/2」で計算した退職所得の金額(1,000円未満切り捨て)に、市町村民税6%・道府県民税4%をそれぞれ掛けて(100円未満切り捨て)合計した金額が住民税額です。先ほどの計算例(退職所得250万円)であれば、住民税は250万円×10%=25万円となります。住民税は退職金の支払い時に勤務先が天引き(特別徴収)するため、給与の住民税のように翌年自分で納付する必要はありません。
確定申告は必要?——状況別の早見表
退職金の源泉徴収票を手元に置いて、上から順に当てはまる行を探してください。「源泉徴収税額」が「支払金額」のちょうど20.42%(1円未満切り捨て)になっていれば、申告書が出ていなかったサインです。
| あなたの状況 | 確定申告 | 理由 |
|---|---|---|
| 源泉徴収税額が支払金額の20.42%になっている(申告書を出していない) | したほうがいい | 退職所得控除も1/2課税も反映されていないため、多くの場合は払いすぎ。申告で正しい税額に精算される |
| 源泉徴収税額が0円(退職金が退職所得控除の範囲内) | 退職金の分は不要 | 戻る税金がない。給与から引かれた所得税が戻るかどうかは別に確認する |
| 申告書を出した。年の途中で辞め、その年は再就職していない(給与収入がおおむね200万円以下) | したほうがいい | 給与で使い切れなかった基礎控除・社会保険料控除が退職所得から引かれ、所得税が戻る(上の還付表) |
| 申告書を出した。年内に再就職し、新しい勤務先で年末調整を受けた | 多くの場合は不要 | 前職と新しい勤務先の給与を合わせた収入で控除を使い切っていれば、余る控除がない。合計の給与収入が少ないときは上の行と同じく戻る可能性がある |
| 申告書を出した。その年の給与収入がおおむね200万円を超えている(年の後半まで働いたなど) | 退職金の分はほぼ不要 | 給与で控除を使い切るため、退職金の税金は戻らないことが多い。年末調整を受けていなければ、給与の所得税の還付のための申告は検討する |
退職金の税金でよくある5つの誤解
「退職金をもらった年は、給与と合算されて税率が上がる」
上がりません。退職金は給与と切り離して計算する分離課税なので、給与の税率には影響しません。退職金の税額は、退職金だけで計算した「課税される退職所得」に速算表を当てはめて決まります。ただし上の早見表の注意書きのとおり、所得税の基礎控除の額を決める合計所得金額には退職所得も入るため、退職金が大きいと確定申告で使える基礎控除が減ることはあります。
「勤続年数は、満で何年働いたかで数える」
1年未満の端数は1日でも1年に切り上げます。勤続19年2か月なら20年として計算するので、退職所得控除は760万円ではなく800万円です。在籍期間を正確に把握していないと、控除額を少なく見積もってしまいます。
「退職金をもらうと、翌年の住民税や国保の保険料が高くなる」
退職金の住民税は支払い時に天引きされて完結する仕組みなので、翌年度の住民税の計算には退職金は入りません。国民健康保険料も、保険料の計算のもとになる所得に退職所得を含めない扱いの市区町村が一般的です(たとえば東京都新宿区は、保険料の計算に使う「総所得金額等」に退職所得を含まないと案内しています)。ただし、所得が急に減った人向けの保険料の減免では、退職金を見込み所得に含めて判定する市区町村もあります。退職した翌年に住民税や国保が高く感じるのは、退職金ではなく退職前の給与に対してかかるためです。いくらになるかは「退職後の住民税・国保・年金の手続きガイド」で確認できます。
「家族の扶養に入っている人が退職金をもらっても、扶養には関係ない」
所得税では関係します。扶養控除や配偶者控除の判定に使う合計所得金額には退職所得も含まれるため、令和8年分は退職所得が62万円を超えると、その年は所得税の扶養控除・配偶者控除の対象から外れます(配偶者なら配偶者特別控除に切り替わることがあります)。たとえばパートで15年勤めた配偶者が退職金800万円を受け取ると、退職所得は100万円になります。一方、住民税では令和4年度分から、分離課税の退職所得を扶養の判定に含めない扱いになっています。健康保険の扶養は税金とは別の基準で決まるので、「退職後に家族の扶養に入る条件」をあわせて確認してください。
「退職金があると、失業手当が減る(もらえない)」
減りません。失業手当(基本手当)の日額は、離職前6か月に毎月決まって支払われた賃金の合計を180で割った賃金日額から計算し、賞与や臨時に支払われるものは含めません。退職金を受け取ったことで日額が増えたり減ったりすることも、受給できなくなることもありません。退職金と失業手当を両方受け取りながら、貯金がどう推移するかはシミュレーターで確認できます。
iDeCo・企業型DCの一時金も受け取る人は?——2026年からの「9年内」ルール
令和7年度税制改正により、2026年(令和8年)1月1日以後にiDeCoや企業型確定拠出年金(DC)の一時金を受け取り、同日以後に勤務先の退職金を受け取る場合の調整ルールが変わりました。
なお、調整の対象は「DCの一時金を先に、勤務先の退職金を後に」受け取る順番の場合の期間です。会社の企業型DCを退職時にどう扱うか(移換・iDeCoへの移行・一時金の受け取り)は「企業型DCは退職したらどうなる?」で、手続きの期限とあわせて説明しています。
参考・出典
- 国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」(退職所得控除額の計算、1/2課税、特定役員退職手当等・短期退職手当等の例外、「退職所得の受給に関する申告書」を提出しない場合の一律20.42%源泉徴収)
- 所得税法 第87条(所得控除の順序)(所得控除は総所得金額から控除し、控除しきれない残額を山林所得金額・退職所得金額から順次控除する旨。退職した年に余った所得控除が退職所得から差し引ける根拠)
- 国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」(令和8年度税制改正による基礎控除の引上げ。令和8・9年分は合計所得489万円以下で104万円。令和8年分以後の所得税に適用)
- 国税庁「No.2260 所得税の税率」(本文の税額計算に用いた速算表。復興特別所得税2.1%を含む)
- 国税庁「専門用語集」の「合計所得金額」(退職所得金額を加算し、確定申告が不要な場合でも加算が必要である旨。基礎控除・扶養控除の判定に退職所得が含まれる根拠)
- 新宿区「国民健康保険料の計算方法」(保険料の計算に使う総所得金額等に退職所得を含まない旨)
- ハローワークインターネットサービス「基本手当について」(賃金日額は離職前6か月に毎月決まって支払われた賃金の合計÷180で、賞与等は除く旨)