住民税非課税世帯になる条件|退職後のメリット【2026年版】
給付金のニュースなどでよく耳にする「住民税非課税世帯」。退職して収入が途切れると、実は多くの人がこの状態に近づきます。医療費の上限が下がり、国民健康保険料が軽くなり、国民年金の保険料も免除されやすくなる——退職後の家計にとっては、地味ですが効きの大きい仕組みです。一方で「前年の所得で判定する」という時間差があるため、退職した直後ではなく、その約2年後に該当するという誤解しやすい構造もあります。この記事では、令和8年度の正確な金額基準、世帯構成別の目安、退職者がいつ非課税になるかのモデルケース、そして受けられるメリットを公的資料に基づいて整理します。
- 令和8年度(令和7年中の所得で判定)の均等割・所得割とも非課税の基準は、扶養親族がいない場合合計所得金額45万円以下=給与収入110万円以下。扶養親族がいる場合は「35万円×(本人+同一生計配偶者+扶養親族の人数)+31万円」以下
- 失業手当は雇用保険法第12条により非課税で所得に数えず、退職金も住民税では現年分離課税で合計所得金額に含まれない。そのため退職の翌年に無収入なら、その翌年度(退職の約2年後)から非課税になる
- 非課税世帯になると、70歳未満の高額療養費の自己負担上限が月36,900円(令和8年8月〜、多数回該当24,600円・年間上限29万円)まで下がり、国保の均等割・平等割は最大7割軽減、国民年金保険料も全額免除の対象になりやすくなる
- 住民税非課税世帯とは——「均等割も所得割もゼロ」の世帯
- 令和8年度の非課税基準はいくらか
- 世帯構成別・非課税になる年収の目安
- 所得の金額に関係なく非課税になる人
- 退職者はいつ非課税世帯になるのか(モデルケース)
- 失業手当と退職金は判定に入るのか
- 非課税世帯になると受けられるメリット
- 誤解しやすい3つの落とし穴
- 自分が該当するかを確かめる方法
住民税非課税世帯とは——「均等割も所得割もゼロ」の世帯
結論から言うと、住民税非課税世帯とは世帯全員の個人住民税が、均等割・所得割ともにかかっていない世帯のことです。片方だけ非課税では該当しません。
個人住民税は、次の2つの部分でできています。
| 区分 | 内容 | 金額(東京23区の例) |
|---|---|---|
| 均等割 | 所得の大小にかかわらず定額でかかる部分 | 都民税1,000円+区市町村民税3,000円=年4,000円 |
| 所得割 | 前年の所得に応じてかかる部分 | 都民税4%+区市町村民税6%=税率10% |
| (参考)森林環境税 | 令和6年度から住民税と併せて徴収される国税 | 年1,000円 |
令和8年度の非課税基準はいくらか
結論として、令和8年度(令和7年=2025年中の所得で判定)の基準は次のとおりです。均等割・所得割の両方が非課税になる条件を満たしたときに「非課税世帯」の判定になります。
| 区分 | 扶養親族・同一生計配偶者がいない場合 | 扶養親族・同一生計配偶者がいる場合 |
|---|---|---|
| 均等割も所得割も非課税 | 前年の合計所得金額が45万円以下 | 35万円×(本人+同一生計配偶者+扶養親族の合計人数)+31万円 以下 |
| 所得割のみ非課税 | 前年の合計所得金額が45万円以下 | 35万円×(同上の合計人数)+42万円 以下 |
この「35万円×人数+31万円」は、自治体によっては「35万円×人数+10万円+21万円」と分けて表記されていますが、金額は同じです。
世帯構成別・非課税になる年収の目安
合計所得金額はぴんと来にくいので、収入が給与だけの場合の年収に換算したものが下の表です。令和7年度税制改正で給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられたため、単身者のラインは従来の年収100万円から110万円に上がりました(令和8年度=2025年中の所得で判定する分に適用)。
| 世帯構成 | 非課税になる合計所得金額 | 給与収入だけの場合の目安 |
|---|---|---|
| 単身(扶養親族なし) | 45万円以下 | 110万円以下 |
| 夫婦2人(配偶者を扶養) | 35万円×2+31万円=101万円以下 | 約166万円以下 |
| 夫婦+子1人(3人世帯) | 35万円×3+31万円=136万円以下 | 約205万円以下 |
| 夫婦+子2人(4人世帯) | 35万円×4+31万円=171万円以下 | 約255万円以下 |
令和9年度分(2026年中の所得で判定する分)からは換算額が変わります。令和8年度税制改正で給与所得控除の最低保障額が74万円に引き上げられたため(国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」)、単身者のラインは年収119万円相当に上がる見込みです。非課税限度額そのもの(合計所得45万円など)は据え置きで、変わるのは給与収入への換算だけです。
所得の金額に関係なく非課税になる人
結論として、次に当てはまる人は所得の金額とは別の基準で住民税が非課税になります。
- 生活保護法による生活扶助を受けている人(1月1日現在)——均等割・所得割ともに非課税
- 障害者・未成年者・寡婦・ひとり親で、前年の合計所得金額が135万円以下の人——均等割・所得割ともに非課税
退職者はいつ非課税世帯になるのか(モデルケース)
結論から言うと、退職した年ではなく、退職の翌年を丸ごと低収入で過ごした結果、その翌年度(退職から約2年後)に非課税になるのが典型的なパターンです。住民税は「前年1月〜12月の所得」に対して「翌年6月〜翌々年5月」に課税されるという、1年遅れの仕組みだからです。
具体的に、次のケースで見てみます。
- 2026年8月末に自己都合で退職(単身・扶養親族なし)
- 退職までの2026年1〜8月の給与収入は400万円
- 2027年は再就職せず、収入は失業手当と貯金の取り崩しのみ
| 所得が発生した年 | その年の合計所得金額 | 課税される住民税の年度 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 2026年(退職した年) | 給与収入400万円 → 給与所得276万円 | 令和9年度(2027年6月〜2028年5月) | 課税 |
| 2027年(失業手当のみ) | 失業手当は非課税のため0円 | 令和10年度(2028年6月〜2029年5月) | 非課税 |
この表が示すのは、退職直後がいちばん苦しいという現実です。2026年8月に会社を辞めた人は、収入がないまま2027年5月まで前年分の住民税を払い続け、さらに2027年6月からは退職年の所得に基づく住民税(この例では年およそ15万円前後)を自分で納めることになります。非課税になるのは2028年6月から——退職から1年10か月後です。
失業手当と退職金は判定に入るのか
結論として、失業手当も退職金も、住民税非課税の判定に使う合計所得金額には含まれません。理由はそれぞれ異なります。
| 収入の種類 | 非課税判定への影響 | 根拠 |
|---|---|---|
| 失業手当(基本手当) | 含まれない | 雇用保険法第12条により、失業等給付を標準として租税その他の公課を課すことができない(=非課税所得) |
| 再就職手当・教育訓練給付金など | 含まれない | 同上(雇用保険の失業等給付・教育訓練給付) |
| 退職金(退職所得) | 含まれない | 個人住民税では退職所得は現年分離課税とされ、非課税限度額の判定に用いる合計所得金額に算入されない |
| 失業中に得た副業・フリーランス収入 | 含まれる | 事業所得・雑所得として合計所得金額に算入 |
| 株式の売却益・配当(申告した場合) | 含まれる | 申告分離課税を選択して申告すると合計所得金額に算入される |
非課税世帯になると受けられるメリット
結論から言うと、住民税そのものが浮く金額(年数万円〜)よりも、それに連動して下がる医療・保険の負担のほうが大きいのが実際です。主なものを整理します。
| 制度 | 住民税非課税世帯だとどうなるか |
|---|---|
| 高額療養費(70歳未満) | 1か月の自己負担上限が最も低い区分になり、36,900円(令和8年8月診療分から。それ以前は35,400円)。多数回該当は24,600円、令和8年8月からは年間上限29万円も導入 |
| 国民健康保険料 | 世帯の所得が基準以下なら均等割・平等割が7割・5割・2割軽減される。7割軽減の基準は「43万円+(給与所得者等の数-1)×10万円」以下 |
| 国民年金保険料 | 全額免除の所得基準は「(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円」。単身なら前年所得67万円以下で全額免除の対象 |
| 介護保険料(65歳以上) | 保険料段階が第1〜第3段階となり、基準額より低い保険料率が適用される |
| 高等教育の修学支援新制度 | 大学・専門学校等の授業料等減免と給付型奨学金で、支援額が最も大きい第Ⅰ区分に該当 |
| 国・自治体の給付金 | 物価高対策の給付金など、住民税非課税世帯を対象とする支援の対象になる |
誤解しやすい3つの落とし穴
- ①「世帯全員」が条件——同居の家族に収入があれば該当しない:本人が無収入でも、同じ住民票の世帯に課税されている人が1人でもいれば非課税世帯にはなりません。親と同居して退職した人、配偶者が働いている人は、本人の住民税がゼロでも「非課税世帯」の給付金などの対象外です
- ②「均等割のみ課税」は非課税世帯ではない:所得割だけが非課税の状態では、多くの支援制度の対象外です。年4,000円の均等割がかかっているかどうかが分かれ目になります
- ③非課税を狙って働き控えするのは本末転倒になりやすい:非課税ラインを1万円超えたことで失うのは、多くの場合まず均等割の年4,000円程度です。手取りが逆転するほどの崖ではありません。一方で給付金の対象からは外れるため、給付金の実施時期によっては差が大きく出ることもあります。いずれにせよ、収入を意図的に抑えるより働いて収入を増やしたほうが手元に残るお金は多い、というのが基本です
自分が該当するかを確かめる方法
もっとも確実なのは書類で確認する方法です。次の3つのいずれかで判断できます。
- ①住民税の納税通知書・特別徴収税額の決定通知書を見る:毎年5〜6月に届きます。均等割額・所得割額がどちらも「0円」なら本人は非課税です。世帯全員分を確認してください
- ②市区町村で「住民税非課税証明書」を取る:課税課の窓口やコンビニ交付で取得できます。給付金の申請などで求められる書類でもあります
- ③源泉徴収票の「支払金額」から逆算する:前年の給与収入が110万円(単身の場合)を下回っていれば、他に所得がない限り非課税に該当します
まとめ
- 住民税非課税世帯とは、世帯全員の均等割・所得割がともに非課税の世帯。所得割のみ非課税の「均等割のみ課税世帯」は対象外になることが多い
- 令和8年度の基準は、扶養親族がいない場合は合計所得金額45万円以下(給与収入110万円以下)。扶養親族がいる場合は「35万円×(本人+同一生計配偶者+扶養親族の人数)+31万円」以下
- 令和7年度税制改正で給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に上がり、単身者のラインは年収100万円から110万円になった
- 障害者・未成年者・寡婦・ひとり親は、合計所得金額135万円以下で非課税。生活扶助を受けている人も非課税
- 失業手当は雇用保険法第12条により非課税、退職金は住民税では現年分離課税のため、いずれも非課税判定の合計所得金額に含まれない
- 退職の翌年を無収入で過ごした場合、非課税になるのはその翌年度=退職の約2年後。退職直後こそ住民税の負担が重い
- 非課税世帯のメリットは、高額療養費の上限が月36,900円(令和8年8月〜、多数回該当24,600円・年間上限29万円)に下がること、国保の7割軽減、国民年金の全額免除、介護保険料の軽減、修学支援新制度の第Ⅰ区分など
- 国保の軽減も年金の免除も住民税の非課税基準とは別の基準で判定される。退職者は前年所得を問わない「失業による特例免除」をまず検討する
参考・出典
- 東京都主税局「個人住民税」(均等割の非課税基準45万円/35万円×人数+31万円、所得割の非課税基準35万円×人数+42万円、均等割額 都民税1,000円+区市町村民税3,000円、森林環境税1,000円、所得割の税率10%)
- 練馬区「住民税が課税されない場合」(均等割・所得割の非課税限度額の計算式、生活扶助受給者、障害者・未成年者・寡婦・ひとり親で合計所得金額135万円以下の非課税)
- 松戸市「令和8年度(令和7年中)の給与収入がいくらまでなら個人市民税・県民税・森林環境税は非課税となりますか?」(給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられ、給与収入110万円以下で非課税)
- 厚生労働省「(参考)高額療養費制度の見直しについて」(PDF)(住民税非課税【70歳未満】の月額上限 現行35,400円→令和8年8月〜36,900円、多数回該当24,600円、年間上限290,000円)
- 日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」(全額免除の所得基準「(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円」、失業等による特例免除と必要書類)
- 松阪市「国民健康保険税の軽減(令和8年度)」(7割軽減「43万円+(軽減基準所得加算対象者数-1)×10万円」、5割・2割軽減の判定基準額)
- 厚生労働省 法令等データベース「雇用保険法」第12条(租税その他の公課は、失業等給付として支給を受けた金銭を標準として課することができない)