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任意継続と国保はどっちが安い?退職後の健康保険料を比較【2026年版】

公開日:2026年7月30日 | この記事は2026年7月時点の制度に基づいています

退職して会社の健康保険を抜けると、「任意継続」「国民健康保険」「家族の扶養」の3つから選ぶことになります。しかも任意継続の申請期限は退職日の翌日から20日以内、国保は14日以内。退職バタバタの時期に、ほとんど猶予のないまま決断を求められます。この記事では、令和8年度(2026年度)の実際の保険料率をもとに、東京都・年収480万円のモデルケースで3択の金額を比べます。結論を先に言うと、判断の分かれ目は「退職理由」と「扶養する家族の人数」の2点です。

この記事の要点
  • 任意継続の保険料は退職時の標準報酬月額×都道府県の保険料率の全額自己負担(会社負担分がなくなるので実質2倍)。ただし協会けんぽの標準報酬月額の上限は令和8年度も32万円で据え置き
  • 倒産・解雇・雇止めなどによる離職(雇用保険の特定受給資格者・特定理由離職者)なら、国保は前年の給与所得を100分の30として算定する軽減が使え、離職日の翌日が属する月から翌年度末まで大幅に安くなる
  • 東京都・前年収入480万円・39歳・単身のモデルでは、任意継続が年38万7,072円、国保(軽減なし)が年約38万1,300円、国保(非自発的失業の軽減あり)が年約13万円。会社都合なら国保、扶養家族が2人以上なら任意継続が有利になりやすい
この記事でわかること
  1. 退職後の健康保険は3択——まず期限を押さえる
  2. 任意継続の保険料はこう決まる(令和8年度の数字)
  3. 国民健康保険の保険料はこう決まる
  4. 会社都合退職なら国保が圧勝——非自発的失業者の軽減制度
  5. モデルケースで比較:年収480万円・東京都
  6. 金額以外の判断ポイント(扶養家族・傷病手当金・途中でやめられるか)
  7. 家族の扶養に入れるケース
  8. 迷ったときの選び方フローチャート

退職後の健康保険は3択——まず期限を押さえる

結論として、日本は国民皆保険なので「何も入らない」という選択肢はありません。次の3つのどれかを選びます。

選択肢期限手続き先保険料の決まり方
任意継続(今の健康保険を続ける)退職日の翌日から20日以内協会けんぽ支部(健保組合の場合は組合)退職時の標準報酬月額×保険料率(全額自己負担)
国民健康保険退職日の翌日から14日以内市区町村の窓口前年の所得+世帯の加入人数で計算
家族の扶養(被扶養者)すみやかに(家族の勤務先経由)家族の勤務先追加負担ゼロ
任意継続の20日という期限は非常に厳格です。協会けんぽは、退職日の翌日から20日以内(20日目が土日祝日の場合は翌営業日まで)に申出書を提出することを条件としています。1日でも過ぎると原則として任意継続は選べません。「あとで比較して決めよう」と考えていると、選択肢そのものが消えます。退職日が決まった時点で試算するのが正解です。

なお任意継続には、退職日までに継続して2か月以上の健康保険の被保険者期間があることという条件もあります。入社してすぐ退職した人は使えません。

任意継続の保険料はこう決まる(令和8年度の数字)

任意継続の保険料は「退職時の標準報酬月額 × 住んでいる都道府県の保険料率」です。在職中は会社と労働者が半分ずつ負担していましたが、協会けんぽが明記しているとおり、退職後は本人が全額負担になります。つまり給与明細に載っていた健康保険料の、おおむね2倍です。

ただし救いがあります。協会けんぽの任意継続には標準報酬月額の上限があり、令和8年度(2026年度)は32万円で、前年度から据え置かれました。退職時の標準報酬月額が40万円でも50万円でも、32万円として計算されるため、高収入だった人ほど負担の伸びが抑えられます。

令和8年4月分からの東京支部の任意継続の料率は、健康保険料率9.85%+子ども・子育て支援金率0.23%10.08%。40歳から64歳の方(介護保険第2号被保険者)はこれに介護保険料率1.62%が加わり11.70%になります。上限の標準報酬月額32万円なら、月3万2,256円(40歳から64歳は月3万7,440円)です。

保険料率は都道府県ごとに異なります。令和8年度は全都道府県で引下げまたは据置きとなり、最も高いのは佐賀県の10.55%です。自分の支部の額は協会けんぽの「令和8年度保険料額表」で確認できます(任意継続被保険者向けの表が別に用意されています)。

2年間ずっと同じ額(値上がりも値下がりもしにくい)

任意継続の保険料は、原則として2年間変わりません。退職時の標準報酬月額で固定されるため、無職で収入がゼロになっても保険料は下がりません。逆に、料率改定・40歳到達(介護保険料の追加)・65歳到達・他県への転出があったときだけ変わります。

前納(まとめ払い)を使うと保険料が割引になります。6か月分(4月〜9月または10月〜翌年3月)または12か月分(4月〜翌年3月)が対象で、納付期限は前納開始月の前月末です。任意継続を選ぶなら、資金に余裕があれば前納を検討する価値があります。
任意継続で最も怖いのは納付期限の1日遅れです。保険料を納付期限までに納付しなかったときは、それだけで資格を喪失します。口座振替(毎月1日)にしておくのが安全です。

国民健康保険の保険料はこう決まる

国保の保険料は「前年の所得に応じた所得割」+「加入人数に応じた均等割」の合計で、料率は市区町村ごとに違います。ここでは東京23区(新宿区)の令和8年度の数字を使って構造を示します。

区分所得割率均等割額(1人あたり)賦課限度額
医療分7.51%47,600円67万円
後期高齢者支援金分2.80%17,600円26万円
介護分(40〜64歳のみ)2.43%17,800円17万円
子ども・子育て支援金分0.27%1,873円(18歳以上)3万円

所得割の計算のもとになるのは、前年(令和7年)の総所得金額等から基礎控除43万円を差し引いた額です。ここが会社の健康保険と決定的に違う点で、国保には扶養という概念がありません。家族を国保に入れると、その人数分の均等割が積み上がります(所得のない子どもでも均等割はかかります。ただし未就学児の軽減など各自治体の制度があります)。

「退職して収入がゼロになったのに国保が高い」と驚く人が多いのは、保険料が前年の所得で決まるからです。退職1年目がいちばん高く、2年目には大きく下がります。任意継続が2年間固定であることと合わせると、「1年目は任意継続、2年目は国保」という切り替えが有効な場合があります(後述)。
令和8年度からは国保にも子ども・子育て支援金分が加算されます(新宿区の場合は所得割0.27%+18歳以上1人あたり1,873円、賦課限度額3万円)。前年度の試算をそのまま流用すると金額が合わないので注意してください。料率・均等割額は自治体ごとに大きく違うため、必ずお住まいの市区町村の令和8年度の数字で確認してください。

会社都合退職なら国保が圧勝——非自発的失業者の軽減制度

結論として、倒産・解雇・雇止めなどで離職した人は、ほぼ国保を選ぶべきです。国民健康保険には非自発的失業者の保険料軽減があり、これが効くと保険料が3分の1近くまで下がります。

軽減されるのは給与所得だけです。事業所得や不動産所得など他の所得は軽減の対象になりません。また、この軽減は申請しないと適用されません。自動では反映されないので、国保の加入手続きと同時に届け出てください。
離職理由コードが「自己都合」でも、正当な理由のある自己都合退職(体調・家族の介護・有期契約の更新なし・特定の条件を満たす転居など)で特定理由離職者と認められれば軽減の対象になります。自分がどちらか分からないときは、雇用保険受給資格者証の離職理由コードを持って、ハローワークと市区町村の国保窓口の両方で確認してください。

モデルケースで比較:年収480万円・東京都

実際の金額で比べます。前提は次のとおりです。

年齢任意継続国保(軽減なし=自己都合)国保(非自発的失業の軽減あり)
39歳(介護分なし)年38万7,072円
(月3万2,256円)
年約38万1,300円
(月約3万1,800円)
年約13万円
(月約1万800円)
45歳(介護分あり)年44万9,280円
(月3万7,440円)
年約47万1,300円
(月約3万9,300円)
年約16万2,000円
(月約1万3,500円)

読み取れることは3つです。

上記の国保額は所得割・均等割を単純計算した概算で、実際には100円未満の端数処理や年度途中加入による月割り計算が入ります。また料率は自治体ごとに大きく異なります。任意継続の額は協会けんぽ東京支部の令和8年度保険料額表の数字です(健保組合に加入していた方は組合独自の料率・上限が適用されます)。
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金額以外の判断ポイント(扶養家族・傷病手当金・途中でやめられるか)

保険料が近い金額になったときは、次の3点で決めます。

1. 扶養する家族がいるなら任意継続が有利になりやすい

任意継続では、在職中と同じように被扶養者の保険料は追加でかかりません。一方、国保は加入する家族の人数だけ均等割が積み上がります。新宿区の例では、18歳以上の加入者が1人増えるだけで医療分47,600円+支援金分17,600円+子ども・子育て支援金分1,873円=年6万7,073円の均等割が加算されます(所得があればさらに所得割)。配偶者と子ども1人を扶養しているなら、それだけで年13万円以上の差が生まれる計算です。

「金額が近いなら扶養家族の人数で決める」——これが最も実用的な判断軸です。単身なら国保、扶養家族が2人以上なら任意継続、と大まかに考えて、実額で確認してください。
任意継続でも被扶養者の認定基準(年間収入130万円未満かつ同一世帯なら被保険者の年間収入の2分の1未満など)を満たす必要があります。60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者は180万円未満、19歳以上23歳未満(配偶者を除く)は150万円未満が基準です。なお協会けんぽは、令和8年4月1日から任意継続被扶養者の認定要件の取扱いを見直しています。家族を引き続き被扶養者にする場合は、最新の基準を協会けんぽ支部に確認してください。

2. 傷病手当金は任意継続では新たに受けられない

任意継続は「原則、在職中と同様の給付」を受けられますが、傷病手当金と出産手当金は例外です。協会けんぽは、任意継続被保険者期間中に発生した病気・ケガによる傷病手当金および出産手当金は支給されないと明記しています。受けられるのは、在職中から継続して給付されている場合(継続給付)だけです。

「病気で働けなくなったときに備えて任意継続にする」という発想は成り立ちません。ただし退職前から傷病手当金を受けていて継続給付の要件を満たすなら、任意継続を選ぶ実益があります(国保には傷病手当金がありません)。

3. 任意継続は途中でやめられる(2年縛りではない)

かつて任意継続は「原則2年間やめられない」制度でしたが、現在は本人の申出による資格喪失が認められています。協会けんぽが挙げる資格喪失事由は、①再就職して健康保険等の被保険者になったとき、②保険料を納付期限までに納付しなかったとき、③後期高齢者医療制度の被保険者になったとき、④任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を申し出たとき、⑤死亡したとき、そして⑥加入から2年が経過したときです。

これを使うと1年目は任意継続、2年目は国保という切り替えが可能になります。退職1年目は前年の高い所得で国保が計算されるため任意継続が有利、2年目は所得が下がって国保が安くなる——というパターンで効きます。切り替えのタイミングは、脱退の効力発生日と国保の加入日がつながるように、協会けんぽ支部と市区町村の両方に事前確認してください。

家族の扶養に入れるケース

結論として、条件を満たすならこれが最も安い選択です。追加の保険料負担はゼロで、被扶養者が増えても家族側の保険料は変わりません。

ただし収入要件があります。年間収入130万円未満(60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者は180万円未満、19歳以上23歳未満で配偶者を除く場合は150万円未満)で、同一世帯なら被保険者の年間収入の2分の1未満、別世帯なら被保険者からの援助額より少ないことが必要です。

見落としやすいのが失業手当も収入に含まれる点です。協会けんぽは、被扶養者の年間収入に雇用保険の失業給付を含めると説明しています。基本手当の日額が3,612円以上になると、日額×360日で年130万円以上と見込まれるため、受給中は扶養に入れないのが原則です。この場合、給付制限期間中や受給が終わったあとに扶養へ切り替える、という運用が現実的です。

迷ったときの選び方フローチャート

国保の実額は、市区町村の窓口で源泉徴収票や離職票を見せれば試算してもらえます。任意継続の額は協会けんぽの令和8年度保険料額表で自分の標準報酬月額の行を見るだけです。退職日が決まったらこの2つを取りに行く——これが20日の期限を無駄にしない唯一の方法です。

まとめ

参考・出典

この記事は2026年7月時点の公表情報に基づく一般的な解説です。国民健康保険の料率・均等割額・軽減制度の運用は市区町村ごとに異なり、健康保険組合に加入していた方は協会けんぽとは異なる料率・上限が適用されます。保険料の実額と手続きの詳細は、お住まいの市区町村の国民健康保険窓口、加入していた健康保険の保険者(協会けんぽ支部または健保組合)に必ずご確認ください。