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任意継続と国保はどっちが安い?退職後の健康保険料を比較【2026年版】

公開日:2026年7月30日 | 最終更新:2026年9月11日

退職して会社の健康保険を抜けると、「任意継続」「国民健康保険」「家族の扶養」の3つから選ぶことになります。しかも任意継続の申請期限は退職日の翌日から20日以内、国保は14日以内。退職バタバタの時期に、ほとんど猶予のないまま決断を求められます。この記事では、令和8年度(2026年度)の実際の保険料率をもとに東京都・年収480万円のモデルケースで3択の金額を比べたうえで、当サイトのシミュレーターで収入・年齢・退職理由を振った20パターンを計算し、任意継続と国保の逆転点がどこにあるかまで出します。結論を先に言うと、判断の分かれ目は「退職理由」「扶養する家族の人数」「前年の給与収入が500万円台を超えるか」の3点です。

この記事の要点
  • 任意継続の保険料は退職時の標準報酬月額×都道府県の保険料率の全額自己負担(会社負担分がなくなるので実質2倍)。ただし協会けんぽの標準報酬月額の上限は令和8年度も32万円で据え置き
  • 倒産・解雇・雇止めなどによる離職(雇用保険の特定受給資格者・特定理由離職者)なら、国保は前年の給与所得を100分の30として算定する軽減が使え、離職日の翌日が属する月から翌年度末まで大幅に安くなる
  • 東京都・前年収入480万円・39歳・単身のモデルでは、任意継続が年38万7,072円、国保(軽減なし)が年約38万1,300円、国保(非自発的失業の軽減あり)が年約13万円。会社都合なら国保、扶養家族が2人以上なら任意継続が有利になりやすい
  • 当サイトのシミュレーターで20パターン計算すると、任意継続が国保(軽減なし)より安くなる逆転点は35歳で前年の給与収入約546万円、45歳で約519万円。一方、軽減が使える場合は前年収入1,400万円超まで国保のほうが安く、実質「軽減が使えるなら国保」で決まる
この記事でわかること
  1. まず20日と14日——期限を過ぎると選択肢が消える
  2. 任意継続はいくらになるのか(令和8年度の料率で計算)
  3. 国保はなぜ「退職1年目がいちばん高い」のか
  4. 自分は軽減が使えるのか——離職理由コードで判定する
  5. モデルケースで比較:年収480万円・東京都
  6. 当サイトのシミュレーターで20パターン計算した——逆転点はどこか
  7. 金額が近いとき、何で決めるか
  8. 扶養に入れるなら負担ゼロ。ただし失業手当が壁になる
  9. 手続きで詰まるのはこの6か所
  10. よくある誤解の訂正
  11. 結局どれを選ぶか——条件別の対応表

まず20日と14日——期限を過ぎると選択肢が消える

結論として、日本は国民皆保険なので「何も入らない」という選択肢はありません。次の3つのどれかを選びます。

選択肢期限手続き先保険料の決まり方
任意継続(今の健康保険を続ける)退職日の翌日から20日以内協会けんぽ支部(健保組合の場合は組合)退職時の標準報酬月額×保険料率(全額自己負担)
国民健康保険退職日の翌日から14日以内市区町村の窓口前年の所得+世帯の加入人数で計算
家族の扶養(被扶養者)すみやかに(家族の勤務先経由)家族の勤務先追加負担ゼロ
任意継続の20日という期限は非常に厳格です。協会けんぽは、退職日の翌日から20日以内(20日目が土日祝日の場合は翌営業日まで)に申出書を提出することを条件としています。1日でも過ぎると原則として任意継続は選べません。「あとで比較して決めよう」と考えていると、選択肢そのものが消えます。退職日が決まった時点で試算するのが正解です。

なお任意継続には、退職日までに継続して2か月以上の健康保険の被保険者期間があることという条件もあります。入社してすぐ退職した人は使えません。

任意継続はいくらになるのか(令和8年度の料率で計算)

任意継続の保険料は「退職時の標準報酬月額 × 住んでいる都道府県の保険料率」です。在職中は会社と労働者が半分ずつ負担していましたが、協会けんぽが明記しているとおり、退職後は本人が全額負担になります。つまり給与明細に載っていた健康保険料の、おおむね2倍です。

ただし救いがあります。協会けんぽの任意継続には標準報酬月額の上限があり、令和8年度(2026年度)は32万円で、前年度から据え置かれました。退職時の標準報酬月額が40万円でも50万円でも、32万円として計算されるため、高収入だった人ほど負担の伸びが抑えられます。

令和8年4月分からの東京支部の任意継続の料率は、健康保険料率9.85%+子ども・子育て支援金率0.23%10.08%。40歳から64歳の方(介護保険第2号被保険者)はこれに介護保険料率1.62%が加わり11.70%になります。上限の標準報酬月額32万円なら、月3万2,256円(40歳から64歳は月3万7,440円)です。

保険料率は都道府県ごとに異なります。令和8年度は全都道府県で引下げまたは据置きとなり、最も高いのは佐賀県の10.55%です。自分の支部の額は協会けんぽの「令和8年度保険料額表」で確認できます(任意継続被保険者向けの表が別に用意されています)。

2年間ずっと同じ額(値上がりも値下がりもしにくい)

任意継続の保険料は、原則として2年間変わりません。退職時の標準報酬月額で固定されるため、無職で収入がゼロになっても保険料は下がりません。逆に、料率改定・40歳到達(介護保険料の追加)・65歳到達・他県への転出があったときだけ変わります。

前納(まとめ払い)を使うと保険料が割引になります。6か月分(4月〜9月または10月〜翌年3月)または12か月分(4月〜翌年3月)が対象で、納付期限は前納開始月の前月末です。任意継続を選ぶなら、資金に余裕があれば前納を検討する価値があります。
任意継続で最も怖いのは納付期限の1日遅れです。納付書は月初めに送付され、期限はその月の10日(土日祝日の場合は翌営業日)。納付期限までに納付しないと、それだけで納付期限の翌日に資格を喪失します。口座振替(毎月1日引落し)が安全ですが、協会けんぽは開始まで申込みから2〜3か月程度かかるとしており、その間は自分で納付書で払う必要があります。この落とし穴は後半の「手続きで詰まるのはこの6か所」で詳しく扱います。

国保はなぜ「退職1年目がいちばん高い」のか

国保の保険料は「前年の所得に応じた所得割」+「加入人数に応じた均等割」の合計で、料率は市区町村ごとに違います。ここでは東京23区(新宿区)の令和8年度の数字を使って構造を示します。

区分所得割率均等割額(1人あたり)賦課限度額
医療分7.51%47,600円67万円
後期高齢者支援金分2.80%17,600円26万円
介護分(40〜64歳のみ)2.43%17,800円17万円
子ども・子育て支援金分0.27%1,873円(18歳以上)3万円

所得割の計算のもとになるのは、前年(令和7年)の総所得金額等から基礎控除43万円を差し引いた額です。ここが会社の健康保険と決定的に違う点で、国保には扶養という概念がありません。家族を国保に入れると、その人数分の均等割が積み上がります(所得のない子どもでも均等割はかかります。ただし未就学児の軽減など各自治体の制度があります)。

「退職して収入がゼロになったのに国保が高い」と驚く人が多いのは、保険料が前年の所得で決まるからです。退職1年目がいちばん高く、2年目には大きく下がります。任意継続が2年間固定であることと合わせると、「1年目は任意継続、2年目は国保」という切り替えが有効な場合があります(後述)。
令和8年度からは国保にも子ども・子育て支援金分が加算されます(新宿区の場合は所得割0.27%+18歳以上1人あたり1,873円、賦課限度額3万円)。前年度の試算をそのまま流用すると金額が合わないので注意してください。料率・均等割額は自治体ごとに大きく違うため、必ずお住まいの市区町村の令和8年度の数字で確認してください。

自分は軽減が使えるのか——離職理由コードで判定する

結論として、倒産・解雇・雇止めなどで離職した人は、ほぼ国保を選ぶべきです。国民健康保険には非自発的失業者の保険料軽減があり、これが効くと保険料が3分の1近くまで下がります。

軽減されるのは給与所得だけです。事業所得や不動産所得など他の所得は軽減の対象になりません。また、この軽減は申請しないと適用されません。自動では反映されないので、国保の加入手続きと同時に届け出てください。

自分が対象かどうかは、2桁の数字で分かる

「自分は会社都合なのか自己都合なのか」を悩む必要はありません。ハローワークで交付される雇用保険受給資格者証(または雇用保険受給資格通知)の離職理由欄に書かれた2桁のコードが、そのまま答えになります。新宿区が軽減の対象として示しているコードは次のとおりです。

離職理由コード区分国保の軽減
11・12・21・22・31・32特定受給資格者(倒産・解雇・雇止めなど)対象
23・33・34特定理由離職者(期間満了・正当な理由のある自己都合など)対象
上記以外(一般の自己都合など)一般受給資格者対象外
見落としやすいのが23・33・34です。有期契約の更新がなかった、体調不良、家族の介護、通勤困難な転居——こうした「正当な理由のある自己都合」は自分では自己都合退職だと思い込みやすいのに、コード上は特定理由離職者として軽減の対象になります。自己都合だと思っていた人が年20万円以上の軽減を取り逃がすのは、ここです。離職理由コードの詳しい読み方は失業手当の給付日数早見表の判定表でも整理しています。
離職票に書かれた会社側の主張と、ハローワークが最終的に認定する離職理由は別物です。コードが確定するのは受給資格の決定時なので、国保の軽減申請は受給資格者証(または受給資格通知)を受け取ってからになります。国保の加入手続き(14日以内)のほうが先に来るため、まず加入し、コードが出た時点で追って軽減を申請する——という順番で構いません。

モデルケースで比較:年収480万円・東京都

実際の金額で比べます。前提は次のとおりです。

年齢任意継続国保(軽減なし=自己都合)国保(非自発的失業の軽減あり)
39歳(介護分なし)年38万7,072円
(月3万2,256円)
年約38万1,300円
(月約3万1,800円)
年約13万円
(月約1万800円)
45歳(介護分あり)年44万9,280円
(月3万7,440円)
年約47万1,300円
(月約3万9,300円)
年約16万2,000円
(月約1万3,500円)

読み取れることは3つです。

上記の国保額は所得割・均等割を単純計算した概算で、実際には100円未満の端数処理や年度途中加入による月割り計算が入ります。また料率は自治体ごとに大きく異なります。任意継続の額は協会けんぽ東京支部の令和8年度保険料額表の数字です(健保組合に加入していた方は組合独自の料率・上限が適用されます)。

当サイトのシミュレーターで20パターン計算した——逆転点はどこか

年収480万円の1点だけでは、自分に当てはまるか分かりません。そこで当サイトの退職シミュレーターの国保計算ロジックを使い、前年の給与収入を5段階、年齢を2段階、退職理由を2段階に振って20パターンを計算しました。以下は当サイトが独自に算出した数値です。

前提はこうです。国保は当サイトのシミュレーターが使っている全国平均的な概算モデル・単身世帯(医療分+支援金分の所得割9.5%、均等割年5万5,000円、40〜64歳は介護分の所得割2.0%+均等割1万7,000円を加算、前年の給与所得から基礎控除43万円を差引後に所得割を計算)。任意継続は協会けんぽ東京支部の令和8年4月分からの料率(40歳未満10.08%/40〜64歳11.70%)です。退職理由「会社都合」は非自発的失業者の軽減(給与所得を100分の30とみなす)を適用しています。

35歳(介護分なし)で計算すると

前年の給与収入退職時の標準報酬月額任意継続(年額)国保・自己都合(年額)国保・会社都合(年額)軽減なしでも安いのは
240万円20万円24万1,920円16万6,150円5万9,750円国保(年7万5,770円安い)
300万円26万円31万4,496円20万6,050円7万1,720円国保(年10万8,446円安い)
360万円30万円36万2,880円24万5,950円8万3,690円国保(年11万6,930円安い)
420万円32万円38万7,072円29万1,550円9万7,370円国保(年9万5,522円安い)
540万円32万円(上限)38万7,072円38万2,750円12万4,730円ほぼ互角(国保が年4,322円安いだけ)

45歳(介護分あり)で計算すると

前年の給与収入退職時の標準報酬月額任意継続(年額)国保・自己都合(年額)国保・会社都合(年額)軽減なしでも安いのは
240万円20万円28万800円20万6,550円7万7,750円国保(年7万4,250円安い)
300万円26万円36万5,040円25万4,850円9万2,240円国保(年11万190円安い)
360万円30万円42万1,200円30万3,150円10万6,730円国保(年11万8,050円安い)
420万円32万円44万9,280円35万8,350円12万3,290円国保(年9万930円安い)
540万円32万円(上限)44万9,280円46万8,750円15万6,410円任意継続(年1万9,470円安い)

この20パターンから読み取れることを3つに絞ります。

1. 任意継続が勝ち始めるのは前年収入500万円台から

標準報酬月額が上限32万円に張り付いた人(おおむね月給33万円以上)の任意継続の年額は、35歳で38万7,072円、45歳で44万9,280円で固定されます。一方、国保は前年収入に比例して伸び続けます。この2本の線が交差する点を1,000円刻みで探すと、35歳は前年の給与収入が約546万円、45歳は約519万円でした。それより下の収入帯では国保(軽減なし)のほうが安く、それより上で初めて任意継続が逆転します。

45歳のほうが逆転点が約27万円低いのは、国保の介護分(所得割2.0%+均等割1万7,000円)が任意継続の介護保険料率1.62%より重いためです。40歳を超えると任意継続に傾くという傾向は、この計算で数字として確認できます。

2. 軽減が使えるなら、収入がいくら高くても国保

会社都合(特定受給資格者・特定理由離職者)の軽減が効く場合、軽減後の国保が任意継続の上限額を上回るのは、同じ計算で35歳は前年収入約1,504万円、45歳は約1,432万円からでした。会社員の給与収入としては現実的にほぼ到達しない水準です。

つまり軽減が使えるなら、金額だけで言えば国保がほぼ常に安い——これが20パターンを計算して出た最も明確な結論です。軽減対象かどうかの判定が、他のどの検討よりも先に来ます。次の章の離職理由コードの表で確認してください。

3. 「どちらが安いか」は住んでいる市区町村で変わる

注意が必要なのは、上のシミュレーター計算(全国平均モデル)と、前章の新宿区の料率で計算したモデルケースで、結論が食い違っている点です。前年収入480万円・39歳では新宿区の料率だと両者がほぼ並びましたが、全国平均モデルでは国保が明確に安く出ます。理由は所得割率の差です。

 国保の所得割率(40歳未満)国保の均等割(1人・40歳未満)
当サイトの全国平均モデル9.5%年5万5,000円
新宿区(令和8年度)10.58%(7.51+2.80+0.27)年6万7,073円(47,600+17,600+1,873)
所得割率で1.08ポイント、均等割で年1万2,000円の差があり、これがそのまま結論をひっくり返します。「任意継続と国保のどちらが安いか」に全国共通の答えはありません。上の表は逆転点の目安を掴むためのもので、最終判断はお住まいの市区町村の令和8年度の料率で行ってください。
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金額が近いとき、何で決めるか

保険料が近い金額になったときは、次の3点で決めます。

1. 扶養する家族がいるなら任意継続が有利になりやすい

任意継続では、在職中と同じように被扶養者の保険料は追加でかかりません。一方、国保は加入する家族の人数だけ均等割が積み上がります。新宿区の例では、18歳以上の加入者が1人増えるだけで医療分47,600円+支援金分17,600円+子ども・子育て支援金分1,873円=年6万7,073円の均等割が加算されます(所得があればさらに所得割)。配偶者と子ども1人を扶養しているなら、それだけで年13万円以上の差が生まれる計算です。

「金額が近いなら扶養家族の人数で決める」——これが最も実用的な判断軸です。単身なら国保、扶養家族が2人以上なら任意継続、と大まかに考えて、実額で確認してください。
任意継続でも被扶養者の認定基準(年間収入130万円未満かつ同一世帯なら被保険者の年間収入の2分の1未満など)を満たす必要があります。60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者は180万円未満、19歳以上23歳未満(配偶者を除く)は150万円未満が基準です。令和8年4月1日から、この「年間収入」の判断方法が変わりました。従来の総合判断ではなく、労働契約で定められた賃金(基本給・諸手当・賞与を含む)から見込まれる年間収入で判定されます。金額の基準は同じですが、労働条件通知書の記載がそのまま判断材料になるため、配偶者がパートで働いている場合は契約内容を先に確認してください。

2. 傷病手当金は任意継続では新たに受けられない

任意継続は「原則、在職中と同様の給付」を受けられますが、傷病手当金と出産手当金は例外です。協会けんぽは、任意継続被保険者期間中に発生した病気・ケガによる傷病手当金および出産手当金は支給されないと明記しています。受けられるのは、在職中から継続して給付されている場合(継続給付)だけです。

「病気で働けなくなったときに備えて任意継続にする」という発想は成り立ちません。ただし退職前から傷病手当金を受けていて継続給付の要件を満たすなら、任意継続を選ぶ実益があります(国保には傷病手当金がありません)。

3. 任意継続は途中でやめられる(2年縛りではない)

かつて任意継続は「原則2年間やめられない」制度でしたが、現在は本人の申出による資格喪失が認められています。協会けんぽが挙げる資格喪失事由は、①再就職して健康保険等の被保険者になったとき、②保険料を納付期限までに納付しなかったとき、③後期高齢者医療制度の被保険者になったとき、④任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を申し出たとき、⑤死亡したとき、そして⑥加入から2年が経過したときです。

これを使うと1年目は任意継続、2年目は国保という切り替えが可能になります。退職1年目は前年の高い所得で国保が計算されるため任意継続が有利、2年目は所得が下がって国保が安くなる——というパターンで効きます。切り替えのタイミングは、脱退の効力発生日と国保の加入日がつながるように、協会けんぽ支部と市区町村の両方に事前確認してください。

扶養に入れるなら負担ゼロ。ただし失業手当が壁になる

結論として、条件を満たすならこれが最も安い選択です。追加の保険料負担はゼロで、被扶養者が増えても家族側の保険料は変わりません。

ただし収入要件があります。年間収入130万円未満(60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者は180万円未満、19歳以上23歳未満で配偶者を除く場合は150万円未満)で、同一世帯なら被保険者の年間収入の2分の1未満、別世帯なら被保険者からの援助額より少ないことが必要です。

見落としやすいのが失業手当も収入に含まれる点です。協会けんぽは、被扶養者の年間収入に雇用保険の失業給付を含めると説明しています。基本手当の日額が3,612円以上になると、日額×360日で年130万円以上と見込まれるため、受給中は扶養に入れないのが原則です。この場合、給付制限期間中や受給が終わったあとに扶養へ切り替える、という運用が現実的です。

手続きで詰まるのはこの6か所

制度の比較で結論が出ても、実際の手続きでつまずくと元も子もありません。協会けんぽと自治体の公表資料に書かれている範囲で、実務上ひっかかりやすい箇所を挙げます。

詰まりやすい箇所実際の扱い
郵送で申出書を出すとき協会けんぽは「郵送による提出の場合は書類到着が20日以内となります」として電子申請を案内しています。消印有効ではなく到着日で判定されます。19日目に投函しても間に合わない可能性があります
口座振替にしたとき引落しは毎月1日(土日祝なら翌営業日)ですが、協会けんぽは「口座振替の開始までには申込みいただいてから2〜3か月程度かかります」としています。最初の2〜3か月は納付書で自分で払う必要があります。さらに残高不足で振替できなかった場合は再振替がなく、その月以降は口座振替そのものが使えなくなります
毎月の納付期限納付書は月初めに送付され、期限はその月の10日(土日祝なら翌営業日)。納付期限までに納付しないと納付期限の翌日で資格を喪失します。初回保険料を正当な理由なく納付しなかった場合は資格そのものが取り消しになります
手続き直後に病院へ行くとき任意継続では資格取得後に「資格情報のお知らせ」が送付されますが、協会けんぽは「概ね2週間程度で送付」としており、マイナ保険証が使えるのはそれが届いた後です。手続き直後の受診はいったん全額自己負担になる可能性があります
家族を被扶養者に入れるとき生計維持を確認できる書類の添付を求められます。協会けんぽが挙げる例は、無職なら非課税証明書、給与収入があるなら給与証明や源泉徴収票の写し、退職者なら離職票・雇用保険受給資格者証の写し、年金受給者なら振込通知書・改定通知書の写しです
国保の14日を過ぎたとき加入自体はできますが、扱いが不利になります。中野区の説明では、資格は事由発生時に遡って取得し保険料も資格取得日に遡って賦課される一方、医療の給付は原則として手続完了日から。つまり遅れた期間は「保険料だけ請求され、給付は受けられない」状態になります。14日以内に済ませるべき手続きの全体像は退職後の手続きガイドにまとめています
この6つを踏まえると、実務上いちばん安全な進め方は「電子申請で任意継続を申し出て、最初の数か月は納付書で10日までに払い、口座振替はその後に切り替わるものとして構える」です。口座振替の申込みを済ませた時点で安心してしまうのが、資格喪失のいちばん多い入口です。

よくある誤解の訂正

この分野は古い情報がそのまま残っているものが多く、前提を間違えたまま選んでしまうケースがあります。

よく言われること実際は
任意継続は一度入ると2年間やめられない本人の申出による資格喪失が認められています。「1年目は任意継続、2年目は国保」という切り替えが可能です
口座振替にしておけば払い忘れの心配はない振替開始まで申込みから2〜3か月かかり、その間は納付書での納付です。再振替もありません
郵送なら20日目の消印で間に合う到着が20日以内である必要があります。協会けんぽは電子申請を案内しています
退職して収入がゼロになれば保険料も下がる任意継続は退職時の標準報酬月額で2年間固定、国保は前年の所得で計算。どちらも今の収入では下がりません
病気に備えて任意継続にすれば傷病手当金が出る任意継続被保険者期間中に発生した病気・ケガによる傷病手当金・出産手当金は支給されません(在職中からの継続給付のみ)
非自発的失業の軽減は会社都合なら自動で付く申請が必要です。加入手続きと同時、または受給資格者証が出てから届け出ないと適用されません
自己都合退職だから軽減は使えない離職理由コードが23・33・34の特定理由離職者なら対象です。自分の認識ではなくコードで判定します
国保は家族の分の保険料がかからない国保に扶養の概念はなく、加入人数分の均等割が積み上がります。所得のない家族でも均等割はかかります
失業手当をもらいながら家族の扶養に入れる失業給付は被扶養者の年間収入に含まれます。日額3,612円以上だと年130万円以上と見込まれ、受給中は原則入れません
被扶養者の認定については、令和8年4月1日から取扱いが変わりました。年間収入の判断が、過去の勤務状況などの総合判断ではなく、労働契約で定められた賃金(諸手当・賞与を含む)から見込まれる年間収入で行われます。基準額そのもの(130万円/180万円/150万円未満)は変わっていませんが、パートの契約内容によっては従来と判断が異なる可能性があります。家族の扶養に入る場合は労働条件通知書を手元に用意してください。

結局どれを選ぶか——条件別の対応表

上から順に見て、最初に当てはまった行で止まってください。

当てはまる条件結論
1家族の健康保険の扶養に入れる(年間収入の見込みが130万円未満などの要件を満たし、失業手当の日額が3,612円未満、または受給前・受給後)扶養が最安(追加負担ゼロ)
2離職理由コードが11・12・21・22・31・32・23・33・34(特定受給資格者・特定理由離職者)で、扶養する家族がいない国保+軽減の申請。金額で迷う余地はほぼありません
3上の軽減が使えて、かつ扶養する家族がいる両方を実額で比較。軽減後の国保は安いものの、家族の人数分の均等割が加わるため逆転しうる
4軽減は使えず、扶養する家族が2人以上いる任意継続が有利になりやすい(被扶養者の保険料が追加でかからない)
5軽減は使えず、単身または扶養1人で、前年の給与収入が500万円台以上任意継続が有利になりやすい(標準報酬月額の上限32万円で頭打ちになる)
6軽減は使えず、単身または扶養1人で、前年の給与収入が500万円未満国保が有利になりやすい。ただし自治体の料率次第なので実額を確認
7ここまでで決まらない/前年収入が高く1年目の国保が重い1年目は任意継続、2年目に申出で国保へ切り替えを検討
国保の実額は、市区町村の窓口で源泉徴収票や離職票を見せれば試算してもらえます。任意継続の額は協会けんぽの令和8年度保険料額表で自分の標準報酬月額の行を見るだけです。退職日が決まったらこの2つを取りに行く——これが20日の期限を無駄にしない唯一の方法です。退職前にやることチェックリストにも、退職日を決める段階で確認しておく項目をまとめています。

まとめ

参考・出典

本記事の「20パターン計算」の数値は、当サイトの退職シミュレーターが使用している国民健康保険の概算ロジック(全国平均的なモデル・単身世帯)と、上記の協会けんぽ東京支部の令和8年度料率に基づいて当サイトが算出したものです。実際の保険料額ではなく、逆転点の傾向を掴むための試算です。
この記事は2026年9月時点の公表情報に基づく一般的な解説です。国民健康保険の料率・均等割額・軽減制度の運用は市区町村ごとに異なり、健康保険組合に加入していた方は協会けんぽとは異なる料率・上限が適用されます。保険料の実額と手続きの詳細は、お住まいの市区町村の国民健康保険窓口、加入していた健康保険の保険者(協会けんぽ支部または健保組合)に必ずご確認ください。