教育訓練給付金の使い方|給付制限の解除と受講費補助【2026年版】
退職して次の仕事を探すとき、「資格を取ってから転職したいけれど、スクール代が高くて手が出ない」と感じる人は多いはずです。教育訓練給付金は、そのスクール代の20〜80%を雇用保険から補助してくれる制度です。そして2025年4月からは、もうひとつ大きな意味が加わりました。対象の教育訓練を受けると、自己都合退職の給付制限(原則1か月)が解除される——つまり、失業手当を受け取り始めるタイミングが早くなります。この記事では、3種類ある給付の違いと自分が対象かの確認方法、そして給付制限の解除でお金の流れがどう変わるかを、モデルケースの数字で整理します。
- 給付率は3種類。一般教育訓練は受講費用の20%(上限10万円)、特定一般は40%(資格取得・就職で50%、上限25万円)、専門実践は受講中50%+資格取得・就職で70%+賃金上昇で80%(年間上限64万円・最大3年192万円)
- 対象になるのは雇用保険の加入期間(支給要件期間)が原則3年以上の人。初めて利用するなら一般・特定一般は1年以上、専門実践は2年以上でよい。離職者は離職日の翌日から受講開始まで原則1年以内
- 2025年4月1日以降に離職し、同日以降に対象の教育訓練の受講を開始すると、自己都合退職の給付制限(原則1か月)が解除され、待期7日の後から基本手当を受給できる。申し出は受給資格決定日か初回認定日まで
- 教育訓練給付金とは——3種類と給付率の違い
- 自分は対象か?支給要件期間の数え方
- 【2025年4月から】教育訓練で給付制限が解除される
- モデルケース①:受講費用30万円の講座でいくら戻るか
- モデルケース②:給付制限の解除で受給スケジュールはどう変わるか
- 専門実践なら生活費の支援もある(教育訓練支援給付金)
- 申請の流れと期限
- やりがちな失敗と注意点
教育訓練給付金とは——3種類と給付率の違い
結論から言うと、教育訓練給付金は厚生労働大臣が指定した講座を修了したときに、支払った受講費用の一部がハローワークから戻ってくる制度です。指定講座は「一般教育訓練」「特定一般教育訓練」「専門実践教育訓練」の3つに分かれていて、社会的なニーズが高い訓練ほど給付率が高くなります。
| 種類 | 給付率 | 上限額 | 支給要件期間 | 主な対象講座のイメージ |
|---|---|---|---|---|
| 一般教育訓練 | 20% | 10万円 | 3年以上 (初回は1年以上) | 簿記、TOEIC・英会話、社会保険労務士、宅建、ITパスポート など |
| 特定一般教育訓練 | 40% 資格取得・就職で50% | 20万円 (50%なら25万円) | 3年以上 (初回は1年以上) | 大型自動車第一種・第二種免許、介護職員初任者研修、税理士、一部のIT関係資格 など |
| 専門実践教育訓練 | 受講中50% 資格取得・就職で70% 賃金が上がれば80% | 年40万円 (70%なら年56万円、 80%なら年64万円) 最大3年192万円 | 3年以上 (初回は2年以上) | 看護師・介護福祉士・保育士などの養成課程、専門職大学院、第四次産業革命スキル習得講座 など |
自分が受けたい講座がどれに当たるかは、厚生労働省の「教育訓練給付制度検索システム」で講座名や資格名から検索できます。同じ資格でも、スクールによって指定講座かどうか・種類が違うことがあるため、申し込む前に必ず講座単位で確認してください。指定されていない講座を受けても、あとから給付を受けることはできません。
自分は対象か?支給要件期間の数え方
結論として、判定のポイントは「雇用保険にどれだけ入っていたか」と「離職からどれだけ経っているか」の2つです。
- ①支給要件期間:受講開始日までの雇用保険の被保険者だった期間。原則3年以上ですが、教育訓練給付を初めて使う人は一般・特定一般なら1年以上、専門実践なら2年以上で対象になります
- ②離職者の受講開始期限:被保険者資格を失った日(離職日の翌日)から受講開始日まで原則1年以内。妊娠・出産・育児・疾病・負傷などで30日以上受講できない事情があるときは、申し出により最大20年まで延長できます
- ③前回の受給からの間隔:過去に教育訓練給付金を受けたことがある場合、前回の支給日から今回の受講開始日の前日までに3年以上経過していることが必要です
【2025年4月から】教育訓練で給付制限が解除される
結論から言うと、自己都合で退職した人が対象の教育訓練を受けると、給付制限が丸ごとなくなります。2025年(令和7年)4月1日に施行された雇用保険法改正によるもので、受講費用の補助とは別に、失業手当のスケジュールを前倒しできるという効果があります。
もともと自己都合退職には給付制限があり、2025年3月31日以前の離職では原則2か月、2025年4月1日以降の離職では原則1か月に短縮されました。さらにその1か月も、教育訓練を受けることで解除できるようになったという流れです。
| 離職の時期・状況 | 給付制限の期間 |
|---|---|
| 会社都合退職・特定理由離職者 | なし(待期7日の後から支給対象) |
| 自己都合退職(2025年4月1日以降の離職) | 原則1か月 |
| 自己都合退職+対象の教育訓練を受講 | 解除(なし) |
| 5年以内に3回以上の自己都合離職 | 3か月 |
対象になる教育訓練の範囲
解除の対象になるのは、令和7年4月1日以降に受講を開始した次のいずれかの訓練です。
- 教育訓練給付金の対象となる教育訓練(一般・特定一般・専門実践のいずれも対象)
- 公共職業訓練等(ハローワークの指示による職業訓練など)
- 短期訓練受講費の対象となる教育訓練
- 上記に準ずるものとして職業安定局長が定める訓練
モデルケース①:受講費用30万円の講座でいくら戻るか
受講費用が30万円(税込・入学料と受講料の合計)の講座を修了した場合、種類によって戻る金額は次のように変わります。
| 種類 | 修了時点の給付 | 資格取得+就職で追加 | 賃金5%上昇で追加 | 最終的な合計 |
|---|---|---|---|---|
| 一般教育訓練 | 6万円(20%) | — | — | 6万円 |
| 特定一般教育訓練 | 12万円(40%) | +3万円(10%) | — | 15万円 |
| 専門実践教育訓練 | 15万円(50%) | +6万円(20%) | +3万円(10%) | 24万円 |
同じ30万円の出費でも、専門実践であれば実質の自己負担は6万円まで下がります。一方、一般教育訓練では24万円が自己負担として残ります。受けたい資格が特定一般や専門実践の指定を受けていないか、申し込む前に確認する価値があるのはこのためです。
モデルケース②:給付制限の解除で受給スケジュールはどう変わるか
次に、給付制限の解除でお金の流れがどう変わるかを見ます。前提は次のとおりです。
- 35歳・勤続8年・自己都合で2026年8月31日に退職(所定給付日数90日)
- 基本手当日額5,000円(支給総額は90日分で45万円)
- 退職の翌週にハローワークで求職申込み・受給資格決定
| 項目 | 教育訓練を受けない場合 | 対象の教育訓練を受けた場合 |
|---|---|---|
| 待期期間 | 7日間 | 7日間 |
| 給付制限 | 原則1か月 | なし(解除) |
| 支給対象になり始める日 | 待期満了の約1か月後 | 待期満了の翌日 |
| 初回振込の目安 | 退職から約2か月半後 | 退職から約1か月半後 |
| 支給総額(90日分) | 45万円 | 45万円 |
この表から読み取れるのは次の2点です。
- 総額は変わらないが、受け取り始めが約1か月早まる:所定給付日数(90日)そのものが増えるわけではありません。効果は「無収入の期間が1か月短くなる」というキャッシュフローの改善です。月の生活費が20万円なら、貯金の谷が約20万円浅くなる計算になります
- 給付日数が長い人ほど打ち切りリスクが下がる:基本手当を受け取れる期間は原則として離職日の翌日から1年間です。所定給付日数が270日・330日と長い人は、給付制限で開始が遅れると1年の枠に収まらず、残りを受け取れないまま期限切れになることがあります。解除によってこのリスクが小さくなります
専門実践なら生活費の支援もある(教育訓練支援給付金)
専門実践教育訓練を受ける離職者には、受講費用の補助とは別に教育訓練支援給付金という生活費の支援があります。看護師・介護福祉士の養成課程など、1〜3年かけて昼間に通う訓練を想定した制度です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 支給額 | 基本手当日額の60%×失業の認定を受けた日数 |
| 年齢要件 | 受講開始時に45歳未満 |
| 受講開始日の期限 | 令和9年(2027年)3月31日以前(暫定措置) |
| 対象外になる訓練 | 通信制・夜間制の課程 |
| そのほかの要件 | 受給資格確認時に一般被保険者でないこと(離職中であること)、失業の状態にあること など |
申請の流れと期限
手続きは講座の種類によって少し違いますが、共通する流れは次のとおりです。
- ①対象かどうかを照会する:ハローワークに「教育訓練給付金支給要件回照会票」を提出し、自分の支給要件期間と対象講座を確認します。在職中でも可能です
- ②【特定一般・専門実践のみ】受講前の手続き:受講開始日の原則14日前までに、キャリアコンサルティングを受けて作成した「ジョブ・カード」などを添えて、住所を管轄するハローワークで受給資格確認の手続きをします。これを忘れると給付を受けられません
- ③受講・修了:受講費用は一度全額を自分で支払います(あとから戻る仕組みです)
- ④支給申請:一般教育訓練は受講修了日の翌日から原則1か月以内。専門実践教育訓練は受講中も6か月ごとに申請でき、その場合は各6か月が終わった日の翌日から1か月以内が期限です
- ⑤【追加給付】資格取得・就職・賃金上昇が決まったら再申請:特定一般の50%分、専門実践の70%・80%分は、修了後に条件を満たしてから別途申請します
やりがちな失敗と注意点
- 離職から1年を過ぎてしまう:受講開始が離職日の翌日から1年を超えると対象外です。退職後すぐに照会だけでも済ませておきましょう
- 指定講座かどうかを確認せずに申し込む:同じ資格・同じスクールでも、コースによって指定・非指定が分かれます。パンフレットの「給付金対象」表記だけでなく、検索システムで講座名を確認してください
- 特定一般・専門実践の事前手続きを忘れる:受講開始14日前までの受給資格確認がないと給付されません。もっとも多く、もっとも取り返しがつかない失敗です
- 給付制限の解除を初回認定日までに申し出ない:受給資格決定日または初回認定日までという期限があります。ハローワークの初回手続きで教育訓練の予定を伝えてください
- 修了認定の基準を満たさない:出席率(多くの講座で80%以上)や修了試験の合格など、スクールが定める修了要件を満たさないと「修了」扱いになりません。給付を前提にするなら通いきれるスケジュールで選びましょう
- 追加給付の申請を忘れる:資格を取って就職した、賃金が5%上がった——という段階で改めて申請しないと、上乗せ分は支給されません
まとめ
- 給付率は一般20%(上限10万円)、特定一般40%(資格取得・就職で50%、上限25万円)、専門実践は50%→70%→80%(年間上限64万円・最大3年192万円)
- 支給要件期間は原則3年以上。初めての利用なら一般・特定一般は1年以上、専門実践は2年以上。離職者は離職日の翌日から受講開始まで原則1年以内(延長すれば最大20年)
- 2025年4月1日以降の離職者が同日以降に対象の教育訓練を受けると、自己都合退職の給付制限(原則1か月)が解除され、待期7日の後から基本手当を受給できる。離職日前1年以内に修了した訓練も対象
- 教育訓練給付金と基本手当は同時に受けられる。ただしハローワークの指示による公共職業訓練は受講料無料のため教育訓練給付金の対象外
- 専門実践を受ける45歳未満の離職者は、教育訓練支援給付金(基本手当日額の60%、受講開始が令和9年3月31日以前)も利用できる
- 特定一般・専門実践は受講開始の原則14日前までに受給資格確認の手続きが必要。忘れると講座を修了しても給付されない
参考・出典
- ハローワークインターネットサービス「教育訓練給付制度」(一般20%・上限10万円、特定一般40%/資格取得時50%・上限20万円/25万円、専門実践50%/70%/80%・年40万円/56万円/64万円・最大3年192万円、支給要件期間3年以上/初回は一般・特定一般1年以上・専門実践2年以上、離職者は離職後1年以内、教育訓練支援給付金は基本手当日額の60%)
- 厚生労働省「令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます」(令和7年4月1日以降の離職は原則1か月の給付制限、教育訓練の受講による解除)
- 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「給付制限が解除され基本手当を受給できる方」リーフレット(対象となる教育訓練の4類型、令和7年4月1日以降の受講開始、離職日前1年以内に受けていた訓練、途中退校は対象外、受給資格決定日・初回認定日までの申し出)
- 厚生労働省「Q&A~一般教育訓練給付金~」(教育訓練経費の20%・上限10万円、4千円を超えない場合は不支給、離職後1年以内・延長で最大20年、前回の支給日から3年以上、受講修了日の翌日から原則1か月以内の申請)
- 厚生労働省「Q&A~専門実践教育訓練給付金~」(受講開始日の原則14日前までの受給資格確認、ジョブ・カード、6か月ごとの支給申請)
- 厚生労働省「教育訓練支援給付金の暫定措置の延長について」(受講開始日が令和9年3月31日以前、45歳未満、通信制・夜間制は対象外)