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退職後に家族の扶養に入る条件|130万円の壁と失業手当【2026年版】

公開日:2026年8月3日 | この記事は2026年8月時点の制度に基づいています

退職後の健康保険で、いちばん負担が軽いのは「家族の扶養に入る」という選択です。保険料はゼロ円で、扶養に入る人が増えても家族側の保険料は変わりません。それでも「去年の年収が400万円あったから無理だろう」「失業手当をもらうから入れないはず」と最初からあきらめてしまう人が多いのが実情です。実際には、判定基準は退職前の年収ではなくこれから見込まれる収入。しかも失業手当をもらう場合も、期間を区切れば扶養に入れます。この記事では130万円の壁の正確な判定方法と、健康保険・年金・税金という3つの「扶養」の違いを整理します。

この記事の要点
  • 健康保険の扶養は「過去の年収」ではなく「これから見込まれる年間収入」で判定する。給与なら月額108,333円以下、雇用保険の失業給付なら日額3,611円以下が基準(年130万円未満に相当)
  • 基本手当の日額が3,612円以上だと受給中は扶養に入れないが、待期7日間・給付制限期間(原則1か月)・受給が終わったあとは扶養に入れる。届出は事実発生から5日以内
  • 保険料がゼロになるのは健康保険。国民年金がゼロになるのは配偶者の扶養(第3号被保険者)に入る20歳以上60歳未満の人だけで、親や子の扶養では国民年金保険料(令和8年度は月17,920円)を自分で払う
この記事でわかること
  1. 「扶養に入る」は3種類ある——まず区別する
  2. 健康保険の扶養に入る条件(130万円・150万円・180万円)
  3. 130万円は「これからの見込み」で判定する
  4. 失業手当をもらうと扶養に入れないのか
  5. 年金はどうなる?配偶者の扶養だけ保険料ゼロ
  6. 税金の扶養(配偶者控除・扶養控除)は別基準
  7. モデルケース:35歳・前年収入400万円で退職した場合の年間負担
  8. 手続きの流れと必要書類
  9. やりがちな失敗と注意点

「扶養に入る」は3種類ある——まず区別する

結論から言うと、「扶養」という言葉は3つの別々の制度を指しており、条件も手続き先も違います。ここを混同するとまず間違えます。

種類何が得になるか収入の基準失業手当は収入に含む?手続き先
健康保険の扶養
(被扶養者)
健康保険料がゼロ年間収入130万円未満の見込み含む家族の勤務先
国民年金の扶養
(第3号被保険者)
国民年金保険料がゼロ年間収入130万円未満の見込み
配偶者のみ・20歳以上60歳未満
含む配偶者の勤務先
税金の扶養
(配偶者控除・扶養控除)
家族の所得税・住民税が減る合計所得金額58万円以下
(給与収入なら123万円以下)
含まない(非課税)家族の年末調整・確定申告
3つのうち、退職直後にいちばん効くのは健康保険の扶養です。国民健康保険なら前年の所得で保険料が計算されるため、退職1年目は年20万〜40万円かかることも珍しくありません。それがゼロになるインパクトは大きく、しかも扶養に入る人が増えても家族の保険料は1円も上がりません。

健康保険の扶養に入る条件(130万円・150万円・180万円)

健康保険の被扶養者になるには、次の2つを両方満たす必要があります。

対象者年間収入の基準月額の目安失業給付の日額の目安
原則(下記以外)130万円未満108,333円以下3,611円以下
19歳以上23歳未満(配偶者を除く)150万円未満125,000円以下4,166円以下
60歳以上、または障害厚生年金を受けられる程度の障害者180万円未満150,000円以下5,000円未満
19歳以上23歳未満の150万円は、令和7年10月1日以降に扶養認定日がある人から適用された比較的新しい基準です。年齢は扶養認定日が属する年の12月31日時点で判定します。大学在学中に短期の就職をして退職した人、卒業後すぐ離職した人はこの枠に当たる可能性があります。

月額・日額の目安は、年間の基準額を12か月または360日で割った金額です。健康保険は年単位ではなくその時点の収入ペースで見るため、実務では月額・日額の判定が使われます。なお、被扶養者になれるのは75歳未満の方です(75歳になると後期高齢者医療制度の被保険者になります)。

130万円という数字は共通ですが、細かい運用は保険者ごとに違います。協会けんぽ(中小企業)と健康保険組合(大企業・業界団体)では、必要書類や仕送りの証明方法が異なることがあります。健康保険組合のほうが基準が厳しいケースもあるため、必ず家族の勤務先の保険者に確認してください。

130万円は「これからの見込み」で判定する

結論として、退職前の年収がいくらでも扶養に入れます。これが最も誤解されているポイントです。

健康保険の被扶養者の「年間収入」は、確定した過去1年の実績ではなく、認定を受ける時点から将来に向かって継続的に得られると見込まれる収入を指します。協会けんぽも、労働契約で定められた賃金から見込まれる年間収入が基準額未満であるかどうかで判定すると説明しています。

たとえば年収600万円で2026年3月末に退職し、その後は無職で失業手当も受けない(または日額3,611円以下)という場合、2026年1〜3月に450万円の収入があっても、退職日の翌日から被扶養者として認定されるのが原則です。「今年の年収が130万円を超えているから来年まで待つ」という必要はありません。

逆に言えば、扶養に入ったあとで収入が増える見込みになった時点で、扶養から外れる届出が必要になります。パートを始めて月額108,333円を超えることになった、失業手当の支給が始まって日額3,612円以上になった——いずれも「事実が発生した時点」が基準です。

扶養に入る対象となる収入には、給与だけでなく雇用保険の失業給付、公的年金、健康保険の傷病手当金・出産手当金も含まれます。「給料はないから収入ゼロ」ではなく、これらの手当を合算して判定します。一方、退職金は一時的な収入なので継続的な収入としては扱われないのが一般的な運用ですが、保険者に確認してください。

失業手当をもらうと扶養に入れないのか

結論は「日額次第。そして期間を区切れば入れる」です。

日本年金機構は、雇用保険等の受給者については日額3,611円以下であれば収入要件を満たすとしています。逆に、基本手当が3,612円以上支給されるようになった場合は、扶養から削除する届出が必要です。3,611円 × 360日 = 約130万円という換算から来ている数字です。

受給が始まる前と終わったあとは扶養に入れる

ここが実務上いちばん役に立つ知識です。日額が3,612円以上でも、実際に基本手当が支給されていない期間は収入がないため、被扶養者として認定できます。日本年金機構も、雇用保険の待期期間中でも収入要件を満たしていれば被扶養者として認定することが可能で、基本手当の支給が始まった場合に扶養削除の届出が必要になると説明しています。

時期期間の長さ扶養に入れるか(日額3,612円以上の場合)
退職直後〜待期期間7日間入れる
給付制限期間(自己都合退職)原則1か月
※5年間に3回以上の自己都合離職は3か月
入れる
基本手当の受給中所定給付日数(90〜330日)入れない(国保か任意継続へ)
受給終了後(引き続き無職)入れる
自己都合退職なら「待期7日+給付制限1か月」で、およそ1か月強は扶養に入れることになります。この期間だけ扶養に入り、支給開始とともに国民健康保険に切り替え、受給が終わったら再度扶養に戻る——という運用が制度上は可能です。国保の保険料は月割りで計算されるため、扶養に入っていた月の分は軽くなります。
出入りには必ず届出が必要です。扶養に入る届出は事実発生から5日以内に家族の勤務先経由で提出します。手続きが煩雑なので、勤務先の担当者に「失業手当の受給開始とともに一度外れ、終了後に戻る予定」と最初に伝えておくとスムーズです。届出を忘れて受給中も扶養のままだった場合、あとから資格をさかのぼって取り消され、その間の医療費の保険負担分(7割)を返還請求されることがあります。

日額が3,611円以下になるのはどんな人か

基本手当日額は、退職前6か月の賃金をもとにした賃金日額に給付率(原則50〜80%、離職時の年齢と賃金水準で変動)を掛けて決まります。日額3,611円以下になるのは、おおむね退職前の月収が10万円台前半までのパート・短時間勤務だった場合です。フルタイム勤務だった人はほぼ3,612円以上になるため、「受給中は扶養に入れない」前提で考えるのが現実的です。

年金はどうなる?配偶者の扶養だけ保険料ゼロ

結論として、国民年金保険料がゼロになるのは配偶者の扶養に入る場合だけです。ここを見落とすと、思っていたより負担が減りません。

国民年金の第3号被保険者は、厚生年金に加入している人(第2号被保険者)に扶養されている配偶者で、原則として年収130万円未満の20歳以上60歳未満の方が対象です。保険料の負担はなく、それでいて老齢基礎年金の受給資格期間に算入されます。届出は健康保険の被扶養者の届出と同時に、配偶者の勤務先を通じて行います。

親の扶養や子の扶養に入る場合、健康保険料はゼロになりますが、国民年金は第1号被保険者として自分で払うことになります。令和8年度(2026年4月〜2027年3月)の国民年金保険料は月17,920円、年間で215,040円です。「扶養に入れば全部ゼロ」ではありません。

払えないときは免除・納付猶予を申請する

退職して収入がなくなった場合、失業等による特例免除が使えます。失業・倒産・事業の廃止などの事実が確認できたときは、失業した本人の前年所得にかかわらず免除・納付猶予の審査を受けられる仕組みです。離職票や雇用保険受給資格者証を添えて、市区町村の年金窓口または年金事務所へ申請します。

制度審査対象になる人の所得対象年齢年金額への反映
全額免除本人・配偶者・世帯主制限なし全額納付した場合の2分の1が反映
納付猶予本人・配偶者(世帯主は問わない20歳以上50歳未満反映されない(受給資格期間には算入)
親と同居して親の扶養に入る場合、全額免除は世帯主(親)の所得も審査対象になるため通らないことが多いのに対し、納付猶予は本人と配偶者の所得だけで判定されるので通りやすい——これが実務上の分かれ目です。ただし納付猶予は年金額に反映されないので、10年以内に追納して埋めるのが理想です。全額免除の所得基準は「(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円」です。

なお、免除・納付猶予は申請時点から2年1か月前までさかのぼって申請できます。「払えず放置していた」という場合も、あきらめずに窓口へ相談してください。

税金の扶養(配偶者控除・扶養控除)は別基準

結論として、税金の扶養は失業手当を収入にカウントしません。健康保険とは正反対です。

配偶者控除の対象となる控除対象配偶者は、その年の12月31日時点で、①民法上の配偶者、②生計を一にしている、③年間の合計所得金額が58万円以下(給与収入のみなら123万円以下)、④事業専従者でない、の4要件をすべて満たす人です。控除額は納税者本人の合計所得金額が900万円以下なら38万円(配偶者が70歳以上なら48万円)です。扶養控除の対象となる扶養親族も、同じ合計所得金額58万円以下という要件です。

雇用保険の失業等給付は、雇用保険法第12条により課税されません。したがって合計所得金額にも含まれません。国税庁も、雇用保険法上の求職者給付は非課税であるため配偶者の合計所得金額には含めないという扱いを示しています。

この結果、失業手当を月15万円もらっている人は、健康保険の扶養には入れないのに、税金の扶養(配偶者控除)には入れるというねじれが生じます。健康保険を国保に切り替えたからといって、家族の年末調整で配偶者控除を出し忘れないようにしてください。
合計所得金額58万円という基準は、令和7年度税制改正で48万円から引き上げられたものです(給与所得控除の最低保障額も55万円から65万円に引き上げられ、いわゆる「103万円の壁」が「123万円の壁」になりました)。令和7年分以後の所得税に適用されます。2024年以前の情報を参照すると数字がずれるので注意してください。

退職した年は、1月から退職月までの給与が合計所得金額に入ります。年の途中で退職した人は、その年は税金の扶養に入れず、翌年から入れるというパターンが一般的です。健康保険の扶養(すぐ入れる)と税金の扶養(翌年から)でタイミングがずれる、と理解しておくとよいでしょう。

モデルケース:35歳・前年収入400万円で退職した場合の年間負担

実際にいくら変わるのかを、次の前提で試算します。

パターン健康保険料(年)国民年金保険料(年)年間合計
①配偶者の扶養に入る(第3号被保険者)0円0円0円
②親の扶養に入る+納付猶予が通る0円0円(猶予)0円
※年金額には反映されない
③親の扶養に入る(年金は自分で納付)0円21万5,040円21万5,040円
④扶養に入らず国保+国民年金約31万3,600円21万5,040円約52万8,600円

読み取れるのは次の3点です。

失業手当を日額3,612円以上受給する場合、受給中の数か月は④の状態になります。たとえば所定給付日数90日(約3か月)なら、その3か月分だけ国保の保険料(月約2万6,000円)が発生し、残りの期間は扶養に戻れる計算です。国保の保険料は月割りなので、扶養に入っていた月は課されません。
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手続きの流れと必要書類

手続きは自分で役所に行くのではなく、扶養してくれる家族の勤務先を通じて行います。

健康保険の扶養に入るなら、国民健康保険の加入手続き(退職日の翌日から14日以内)は不要です。ただし認定されるまでは無保険状態になるため、この期間に医療機関にかかると一度全額を自己負担し、あとから療養費の請求をすることになります。持病がある方は、扶養の認定見込みを勤務先に確認したうえでスケジュールを組んでください。

やりがちな失敗と注意点

まとめ

参考・出典

この記事は2026年8月時点の公表情報に基づく一般的な解説です。被扶養者の認定基準の細部(同一世帯の判定、仕送りの証明方法、必要書類)は健康保険の保険者(協会けんぽ支部または健康保険組合)ごとに運用が異なります。国民健康保険の料率は市区町村ごとに異なります。実際の認定の可否と手続きは、扶養してくれるご家族の勤務先、加入する健康保険の保険者、年金事務所、税務署に必ずご確認ください。