再就職手当とは|早く再就職が決まったらもらえるお金の仕組み【2026年版】
失業手当(基本手当)を受給している途中で再就職が決まると、「もらい損になるのでは」と不安になる人は少なくありません。しかし雇用保険には、早期に再就職した人にお金を支給する「再就職手当」という制度があります。条件を満たせば、まとまった一時金として受け取れます。この記事では、給付率が70%と60%のどちらになるかの境目、実際にいくらになるのか(当サイトのシミュレーターで計算した8パターンの実額)、そして窓口でつまずきやすい点までを、ハローワークが配布しているリーフレットの記載にもとづいて整理します。
- 再就職手当は「基本手当日額×支給残日数×60%または70%」(1円未満切り捨て)。所定給付日数を3分の2以上残して再就職すれば給付率70%になる
- 計算に使う基本手当日額には上限がある。令和8年8月1日〜令和9年7月31日は60歳未満6,745円・60歳以上65歳未満5,454円。月収40万5,000円あたりを超えると、この上限で頭打ちになる
- 自己都合退職で給付制限1か月がある人は、その期間中に就職が決まれば支給残日数が満額のまま残るため必ず70%になる。ただしその時期は「ハローワークまたは職業紹介事業者の紹介による就職」でなければ対象にならない
- 「早く決めると損」は本当か——制度が用意されている理由
- もらえる人・もらえない人はどこで分かれるのか(8つの要件)
- 70%か60%か——所定給付日数ごとの「残り何日」ライン表
- 当サイトのシミュレーターで8パターン計算した受給額
- 「これ、実は違います」——よくある6つの誤解
- 申請でつまずきやすいところ
- 再就職後に給与が下がったら——就業促進定着手当の実額
「早く決めると損」は本当か
再就職手当とは、雇用保険の失業手当(基本手当)を受給できる資格を持つ人が、基本手当をすべて受け取り切る前に安定した職業に就いた場合に支給される一時金です。失業手当は受け取っていない残日数が消えていく仕組みなので、放っておくと「就職を先延ばししたほうが得」に見えてしまいます。再就職手当は、残っている基本手当の一部を再就職のタイミングに応じてまとめて支給することで、その逆転を打ち消すための制度です。
逆に言えば、「もらい切ってから就職する」と再就職手当はゼロになります。あとで見るとおり、給付率が70%になるうちに決めた場合と、残日数が3分の1を切ってから決めた場合では、受け取れる額が3〜7倍変わることもあります。
もらえる人・もらえない人はどこで分かれるのか
再就職手当の支給を受けるには、次の8つの要件をすべて満たす必要があります。1つでも欠けると支給されません。
- 受給手続き後、7日間の待期期間が満了したあとに就職、または事業を開始したこと
- 就職日の前日までの失業の認定を受けたうえで、基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あること
- 離職した前の事業主に再び就職したものでないこと。資本・資金・人事・取引面で密接な関わりがある事業主への就職も対象外
- 離職理由により給付制限がある場合、求職申込みをしてから待期期間満了後1か月の期間内は、ハローワークまたは職業紹介事業者の紹介によって就職したこと
- 1年を超えて勤務することが確実であること
- 原則として、雇用保険の被保険者になっていること
- 過去3年以内の就職について、再就職手当または常用就職支度手当を受けたことがないこと(事業開始にかかる再就職手当も含む)
- 受給資格決定(求職申込み)の前から採用が内定していた事業主に雇用されたものでないこと
「1年を超えて勤務することが確実」が外れるケース
5つ目の要件は雇用形態によって判断が分かれます。ハローワークのリーフレットは、1年以下の雇用期間を定めて契約更新に一定の目標達成が条件付けられている場合(生命保険会社の外務員や損害保険会社の代理店研修生が例示されています)、および派遣就業で雇用期間が定められ、契約更新が見込まれない場合は、この要件に該当しないと明記しています。契約社員や派遣で決まった場合は、雇用契約書を持って窓口で確認するのが確実です。
70%か60%か——「残り何日」で決まるライン
再就職手当の額は次の式で決まります。
再就職手当の額 = 基本手当日額 × 支給残日数 × 60%(または70%)
給付率がどちらになるかは、就職日の前日までに残っている支給残日数が、所定給付日数の何割にあたるかで決まります。割合で言われるとわかりにくいので、ハローワークのリーフレットが示している「実日数」に直したのが次の表です。
| 所定給付日数 | 給付率70%になる残日数 (3分の2以上) | 給付率60%になる残日数 (3分の1以上) | 自己都合(給付制限1か月)の人が 70%を確保できる目安 |
|---|---|---|---|
| 90日 | 60日以上 | 30日以上 | 受給資格決定から約67日目まで |
| 120日 | 80日以上 | 40日以上 | 約77日目まで |
| 150日 | 100日以上 | 50日以上 | 約87日目まで |
| 180日 | 120日以上 | 60日以上 | 約97日目まで |
| 210日 | 140日以上 | 70日以上 | 約107日目まで |
| 240日 | 160日以上 | 80日以上 | 約117日目まで |
| 270日 | 180日以上 | 90日以上 | 約127日目まで |
| 300日 | 200日以上 | 100日以上 | 約137日目まで |
| 330日 | 220日以上 | 110日以上 | 約147日目まで |
| 360日 | 240日以上 | 120日以上 | 約157日目まで |
左3列はハローワーク「再就職手当のご案内」に掲載されている数値です。右端の列は、待期7日+給付制限1か月(約30日)=約37日間は基本手当が1日も発生しないという仕組みから、当サイトで逆算した目安です。「約37日+所定給付日数の3分の1の日数」という単純な足し算になります。会社都合など給付制限がない人は給付制限の30日ぶんが無くなるので、それぞれ約30日早いタイミングが期限になります。実際の残日数は失業の認定を受けた日数で決まるため、認定日の並びによって数日前後します。
過去5年間に自己都合退職が3回以上ある人は給付制限が3か月のままなので、70%を確保できる期間はさらに長くなります。所定給付日数そのものの決まり方は失業手当の給付日数早見表で確認できます。
当サイトのシミュレーターで8パターン計算してみた
「基本手当日額×残日数×70%」と言われても、自分の場合いくらになるのかは見えません。そこでトップページのシミュレーターと同じ計算式(令和8年8月1日改定の公式計算式)で基本手当日額と所定給付日数を求め、そこから再就職手当を計算した結果を並べました。賃金日額は「月収÷30」、金額は1円未満切り捨てです。
| 条件 | 賃金日額 | 基本手当日額 | 所定給付日数 | 満額を残して70% | 3分の2ちょうどで70% | 3分の1ちょうどで60% |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 25歳・月収20万円・勤続3年・自己都合 | 6,667円 | 5,037円 | 90日 | 317,331円 | 211,554円 | 90,666円 |
| 30歳・月収25万円・勤続5年・自己都合 | 8,333円 | 5,776円 | 90日 | 363,888円 | 242,592円 | 103,968円 |
| 35歳・月収30万円・勤続8年・自己都合 | 10,000円 | 6,307円 | 90日 | 397,341円 | 264,894円 | 113,526円 |
| 40歳・月収35万円・勤続12年・自己都合 | 11,667円 | 6,630円 | 120日 | 556,920円 | 371,280円 | 159,120円 |
| 48歳・月収40万円・勤続22年・自己都合 | 13,333円 | 6,744円 | 150日 | 708,120円 | 472,080円 | 202,320円 |
| 35歳・月収30万円・勤続8年・会社都合 | 10,000円 | 6,307円 | 180日 | 794,682円 | 529,788円 | 227,052円 |
| 50歳・月収45万円・勤続22年・会社都合 | 15,000円 | 7,500円 →上限6,745円 | 330日 | 1,558,095円 | 1,038,730円 | 445,170円 |
| 62歳・月収30万円・勤続25年・会社都合 | 10,000円 | 5,348円 | 240日 | 898,464円 | 598,976円 | 256,704円 |
同じ条件でも、右の3列で3倍から7倍の差が出ています。たとえば35歳・月収30万円・勤続8年で自己都合退職した人は、給付制限中に決まれば39万7,341円ですが、残り30日まで受け取ってから決めると11万3,526円です。差額は28万円を超えます。
「満額を残して70%」は会社都合の人には難しい
表のいちばん左の金額列は、支給残日数が所定給付日数のまま残っているケースです。自己都合で給付制限1か月がある人にとってはこれは十分あり得る話ですが、会社都合の人は待期7日が明けた翌日から基本手当が発生し始めるため、この列に届くには待期期間中に就職が決まる必要があります。しかも要件8で「受給資格決定(求職申込み)の前から内定していた事業主」は対象外なので、求職申込みのあと待期の7日以内に決まる、という非常に狭いケースに限られます。会社都合の人は、真ん中の「3分の2ちょうど」の列を現実的な上限として見てください。
月収40万5,000円を超えると上限で頭打ちになる
上の例では、上限がなければ7,500円×330日×70%=173万2,500円でしたが、上限が効いて155万8,095円になりました。差は約17万円です。高収入だった人ほど、再就職手当の「増え方」は早く止まると考えてください。
なお、この試算は基本手当日額と所定給付日数だけを使った単純計算です。退職後は住民税・国民健康保険・国民年金の支払いが同時に来るので、手元にいくら残るかは別の話になります。そちらは退職後の住民税・国保・年金の手続きガイドで扱っています。
「これ、実は違います」——よくある6つの誤解
| よくある思い込み | 実際の扱い |
|---|---|
| 再就職手当をもらったら、失業手当の残りは完全に消える | 再就職手当の支給後に離職して失業状態になった場合、再就職手当分を除く残日数分の基本手当を受給できる場合があるとハローワークのリーフレットに明記されています。まず窓口に相談してください。 |
| 待期の7日間は、カレンダーで7日たてば終わる | 待期期間中に仕事などをして失業の状態でなかった日、および失業の認定を受けていない日は、待期期間に含まれません。実際の待期満了日がカレンダーどおりにならないことがあります。 |
| 知人の紹介や求人広告で決めた仕事は再就職手当の対象外 | 給付制限がない人は、待期期間経過後であれば就職の経路は問われません。知人の紹介や新聞広告での応募でも対象です。給付制限がある人も、待期満了後1か月を過ぎれば経路は問われなくなります。 |
| 教育訓練で給付制限が解除されたので、就職経路も自由になった | 給付制限が解除された場合も、待期期間満了後1か月の期間内はハローワークまたは職業紹介事業者の紹介による就職であることが必要です。 |
| 個別延長給付などで日数が延びたぶんも残日数に数えられる | 延長給付の支給残日数は、再就職手当に係る支給残日数としてはみなされません。給付率の判定に使えるのは所定給付日数の分だけです。 |
| 起業して再就職手当をもらった人も、就業促進定着手当をもらえる | 起業により再就職手当を受給した場合、就業促進定着手当は受けられません。同手当は「同じ事業主に6か月以上、雇用保険の被保険者として雇用されていること」が条件です。 |
申請でつまずきやすいところ
再就職手当を受け取るには、就職した日(または事業を開始した日)の翌日から1か月以内に「再就職手当支給申請書」を、雇用保険受給資格者証を添えてハローワークに提出します。提出は本人、代理人、郵送のいずれでも認められています。実務で引っかかりやすいのは、この期限そのものよりも次の3点です。
- 就職日の前日までの失業の認定:これを受けていないと支給残日数が確定しません。リーフレットにも「必ず就職日の前日までの失業の認定を受けてください」と注記があります。内定が出たら、次の認定日と入社日のどちらが先に来るかを必ず確認してください。認定日に必要な求職活動実績については求職活動実績の作り方で解説しています。
- 入社日を自分で決められる場合の並び順:給付制限中に決まったのに紹介経路の要件を満たさない、逆に数日待てば70%のラインに間に合った、といったケースは入社日の設定次第で結果が変わります。相談できる余地があるうちに窓口で確認するのが確実です。
- 手続きの詳細は「受給資格者のしおり」:申請書の書き方や添付書類の扱いは、受給手続きのときに配られるしおりに記載されています。紛失した場合も窓口で確認できます。
受給手続きそのものの流れが不安な場合は、失業手当のもらい方を5ステップで解説で全体像を確認してから読むとつながりやすくなります。
再就職後に給与が下がったら——就業促進定着手当の実額
再就職手当を受け取った人が、再就職先に6か月以上雇用され続け、かつ再就職後6か月間の賃金が離職前の賃金より低い場合は、その差額分を補う「就業促進定着手当」を追加で受け取れます。計算式は次のとおりです。
(離職前の賃金日額 - 再就職後6か月間の賃金の1日分の額)× 再就職後6か月間の賃金の支払基礎となった日数
月給制の場合、「再就職後6か月間の賃金の1日分の額」は6か月間の賃金合計額÷180で計算します。賞与など3か月を超える期間ごとに支払われる賃金は含みませんが、通勤手当や皆勤手当は含みます。支払基礎となった日数は、月給制なら暦日数(6か月で181〜184日程度)です。
上限額が先に効くことが多い
この手当には別の上限があります。
上限額 = 基本手当日額(60歳未満6,745円/60歳以上65歳未満5,454円)× 支給残日数 × 20%
上の試算表の「35歳・月収30万円・勤続8年・会社都合」(基本手当日額6,307円、所定給付日数180日)の人が、残120日で再就職手当を受け取り、その後の月収が27万円になったケースを計算してみます。
- 離職前の賃金日額 10,000円(45歳未満の上限16,540円以下なのでそのまま)
- 再就職後6か月の賃金合計 27万円×6=162万円 → ÷180=9,000円
- 差額 10,000円−9,000円=1,000円。支払基礎日数を182日とすると 1,000円×182日=182,000円
- 上限額 6,307円×120日×20%=151,368円
- → 上限が先に効くため、受け取れるのは151,368円
申請期間は2か月しかない
申請期間は再就職した日から6か月経過した日の翌日から2か月間です。申請書は再就職手当の支給決定通知書とともにハローワークから郵送されてきます。必要書類は、就業促進定着手当支給申請書、雇用保険受給資格者証、就職日から6か月間の出勤簿の写し、同期間の給与明細または賃金台帳の写しの4点です。勤務先から6か月分の書類をそろえてもらう必要があるので、6か月が経つ前に依頼しておくと間に合いやすくなります。
まとめ
- 再就職手当=基本手当日額×支給残日数×60%(3分の1以上残し)または70%(3分の2以上残し)、1円未満切り捨て
- 計算に使う基本手当日額の上限は令和8年8月1日から60歳未満6,745円・60歳以上65歳未満5,454円。月収40万5,000円あたりを超えると増えなくなる
- 自己都合で給付制限1か月がある人は、給付制限中に決まれば70%満額。ただしこの時期はハローワークまたは職業紹介事業者の紹介による就職が必要
- 申請は就職日の翌日から1か月以内。就職日の前日までに失業の認定を受けておくこと
- 賃金が下がった場合の就業促進定着手当は上限が支給残日数の20%。申請期間は6か月経過日の翌日から2か月間
参考・出典
- ハローワーク「再就職手当のご案内」(令和8年8月版・LL080801保02。支給要件・給付率・支給残日数の早見表・基本手当日額の上限額6,745円/5,454円)
- ハローワーク「就業促進定着手当」(令和8年8月版・LL080801保03。計算式・上限額・申請期間・必要書類)
- 厚生労働省「雇用保険の基本手当日額の変更」(令和8年7月31日報道発表。令和8年8月1日からの基本手当日額の計算式・上限額)
- 厚生労働省「令和6年雇用保険制度改正(令和7年4月1日施行分)について」(就業促進定着手当の上限引下げ・給付制限期間の短縮)