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傷病手当金と失業手当の違いと切り替え方|同時にもらえる?【2026年版】

公開日:2026年7月24日 | 最終更新:2026年8月31日

病気やケガで会社を休み、そのまま退職を考えている人にとって、「傷病手当金と失業手当は両方もらえるのか」「どちらを先に受け取ればいいのか」は大きな不安です。結論から言うと、この2つは同時には受け取れません。役割が正反対だからです。しかし正しい順番で手続きすれば、療養中も退職後も収入の空白をつくらずに給付を受け取れます。この記事では、両制度の違いと、退職後の継続給付・受給期間延長を使った切り替え方を、協会けんぽとハローワークの公表情報にもとづいて解説します。

この記事の要点
  • 傷病手当金(働けない人向け)と失業手当(すぐ働ける人向け)は役割が正反対で、同時には受け取れない。「療養中は傷病手当金→回復後は失業手当」とバトンタッチするのが基本
  • 金額の大小は月収で逆転する。当サイトの計算式で試算すると、月収27万円前後が分かれ目で、それより低い人は失業手当のほうが日額が高く、高い人は傷病手当金のほうが高い
  • 病気やケガが理由の退職は特定理由離職者と判断されうる。該当すれば自己都合でも給付制限(原則1か月)がかからず、被保険者期間の要件も1年間に6か月以上へ緩和される
  • 退職後も療養が続くなら、退職後すぐハローワークで失業手当の「受給期間延長」を申請すれば、受給期間を最長4年まで延ばして回復後に受け取れる
この記事でわかること
  1. 2つの制度を分ける、たった1つの基準
  2. 療養中と回復後、金額はどう変わる?(当サイトの計算式で比較)
  3. 傷病手当金は本当に「給料の3分の2」なのか
  4. 退職しても傷病手当金は続くのか——2つの関門
  5. あなたはどのパターン?退職時の状況別チャート
  6. 回復後に失業手当へ切り替える実務
  7. よくある誤解を5つ、訂正します
  8. 申請書のどこで詰まるか

2つの制度を分ける、たった1つの基準

この2つを同時に受け取れない理由は、突き詰めるとひとつです。傷病手当金は「働けない」ことが支給の条件、失業手当は「働ける」ことが受給の条件だから。同じ期間について「働けない」と「働ける」の両方を主張することはできないので、どちらか一方しか成立しません。

加入している保険も、窓口も、金額の決まり方も別物です。

傷病手当金失業手当(基本手当)
制度健康保険雇用保険
対象病気・ケガで働けないすぐ働けるのに職がない人
窓口協会けんぽ・健康保険組合ハローワーク
金額のもと標準報酬月額の平均離職前6か月の賃金(賞与を除く)
金額の目安賃金の約3分の2(日額)賃金日額の5〜8割(日額)
期間支給開始日から通算1年6か月年齢・勤続・離職理由で90〜330日
順番は自分で選べるものではありません。働けない状態なら傷病手当金しか成立せず、働ける状態になってはじめて失業手当が成立します。選べるのは「退職日をいつにするか」と「退職日に出勤しないこと」——ここが後の受給額を大きく左右します。

療養中と回復後、金額はどう変わる?

ここからは、当サイトのシミュレーターが使っている計算式(令和8年8月1日改定の基本手当日額)と、協会けんぽの傷病手当金の計算式で、同じ人の「療養中の1か月」と「回復後の1か月」を実際に計算して並べます。他サイトの一般論ではなく、当サイトの計算ロジックから導いた数値です。

試算の前提:標準報酬月額の平均=月収と仮定。賃金日額=月収×6÷180(賞与は含めない)。基本手当日額は令和8年8月1日改定の逓減式・年齢別上限を適用。傷病手当金日額は協会けんぽの端数処理(平均額÷30は10円未満四捨五入、×3分の2は1円未満四捨五入)で計算しています。

条件(年齢・月収・勤続)療養中
傷病手当金の日額/30日分
回復後
基本手当の日額/30日分
日額の差
28歳・22万円・3年4,887円/146,610円5,357円/160,710円失業手当が470円高い
35歳・28万円・7年6,220円/186,600円6,119円/183,570円傷病手当金が101円高い
42歳・34万円・12年7,553円/226,590円6,582円/197,460円傷病手当金が971円高い
52歳・41万円・22年9,113円/273,390円6,833円/204,990円傷病手当金が2,280円高い
62歳・30万円・25年6,667円/200,010円5,348円/160,440円傷病手当金が1,319円高い

分かれ目は月収27万円前後

表を見ると、月収が低い人だけ失業手当のほうが高くなっています。理由は基本手当日額の「逓減」です。基本手当は賃金日額が低いほど高い割合(最大80%)で計算され、賃金が上がるほど割合が下がって最後は50%(60〜64歳は45%)に張り付きます。一方、傷病手当金は月収がいくらでも一律で約3分の2(66.7%)。だから、賃金比が66.7%を切るあたりで逆転します。

40歳・勤続12年の人で月収だけを動かして計算すると、逆転点はこうなります。

月収賃金日額基本手当日額
(賃金比)
傷病手当金日額
(賃金比)
どちらが高い
20万円6,667円5,037円(75.6%)4,447円(66.7%)失業手当
24万円8,000円5,644円(70.5%)5,333円(66.7%)失業手当
27万円9,000円6,013円(66.8%)6,000円(66.7%)ほぼ同額
30万円10,000円6,307円(63.1%)6,667円(66.7%)傷病手当金
36万円12,000円6,669円(55.6%)8,000円(66.7%)傷病手当金
とはいえ、月額の差より効くのが受け取れる期間です。上の42歳・月収34万円の人なら、失業手当は所定給付日数120日で総額約79万円。対して傷病手当金は通算1年6か月=最大547日分で、単純計算すると約413万円になります。療養が必要な状態なら、無理に失業手当へ急いでも金額面のメリットはありません。

回復後の失業手当が具体的に何日分・いくらになるかは、年齢と勤続年数の組み合わせで決まります。失業給付の日数早見表で自分の欄を確認してください。

傷病手当金は本当に「給料の3分の2」なのか

まず、支給されるのは次の4つをすべて満たしたときです。

最初の連続3日間は「待期期間」として支給されません。4日目以降の働けなかった日が対象です。待期には土日・祝日・有給休暇も含めてカウントできますが、連続していることが必須で、途中で1日でも出勤すると振り出しに戻ります。

計算の元は「給料」ではなく「標準報酬月額」

1日あたりの金額は次の式です。

支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額 ÷ 30 × 3分の2

ここでよく誤解されるのが「給料の3分の2」という言い方です。実際の計算に使うのは標準報酬月額——社会保険料の計算のために給与を区切りのよい等級に当てはめた金額で、残業代の増減がそのまま反映されるわけではありません。賞与も含まれません。年収に占める賞与の割合が大きい人ほど、体感の「3分の2」より少なくなります。

計算の端数処理も決まっています。平均額を30で割った時点で10円未満を四捨五入し、そこに3分の2を掛けて1円未満を四捨五入します。標準報酬月額の平均が30万円なら、30万円÷30=10,000円、×3分の2=6,667円が日額です。

加入12か月未満なら「32万円」との低いほうで計算される

意外と知られていないのが、支給開始日以前の被保険者期間が12か月に満たない場合の扱いです。この場合は、次のいずれか低い額を使って計算します。

転職して間もない人が高い給与で入社していても、日額は32万円ベース(=32万円÷30=10,670円×3分の2=7,113円)で頭打ちになります。転職直後の休職では、この差が想定外に効くことがあります。

支給期間は「通算」1年6か月

支給を開始した日から通算して1年6か月です。令和4年1月1日以降は、途中で復職して傷病手当金が支給されなかった期間は差し引いてカウントされます。つまり「働けなかった日」だけを積み上げて1年6か月に達するまで受け取れる仕組みで、復職と再休職を繰り返しても日数を無駄にしません。

退職しても傷病手当金は続くのか——2つの関門

退職して健康保険の被保険者でなくなっても、次の2つを満たせば受け取り続けられます(資格喪失後の継続給付)。逆にいえば、この2つは退職前にしか整えられません。

関門②で最も多いつまずきが「退職日の出勤」です。挨拶や私物の引き取りのつもりで出社しても「働ける状態だった」とみなされ、継続給付の条件を満たせなくなる場合があります。療養中に退職日を迎えるなら、退職日は出勤しない。荷物の受け取りは郵送や代理人で調整してください。心配な場合は事前に協会けんぽ・健康保険組合に確認を。

なお継続給付は「退職前から続いている同じ傷病」が対象です。退職後に新しく発症した病気で働けなくなっても、その分の傷病手当金は出ません。

あなたはどのパターン?退職時の状況別チャート

退職時点の状況によって、やるべき手続きは4通りに分かれます。自分がどれに当てはまるか確認してください。

退職日までの健保加入退職日の状態退職後の療養見込みあなたがやること
継続1年以上療養中(出勤していない)30日以上続く ①フル活用パターン
退職後も傷病手当金を継続受給。あわせて退職後すぐハローワークで受給期間延長を申請し、回復後に失業手当へ。空白が最も小さい
継続1年未満療養中30日以上続く ②延長のみパターン
傷病手当金は退職で打ち切り。失業手当の受給期間延長だけは必ず申請し、回復後の受給権を守る。国保・年金の減免も早めに相談を
問わないすでに回復・就労可能療養なし ③即申請パターン
離職票が届き次第ハローワークで求職申込み。病気が退職理由なら特定理由離職者の判断を求め、給付制限の有無を確認する
問わない療養中30日未満で回復見込み ④延長不要パターン
受給期間延長の要件(引き続き30日以上働けない)を満たさない。回復後すみやかに求職申込みへ。ただし療養が長引いたら30日経過後に延長を申請できる

回復後に失業手当へ切り替える実務

失業手当の受給期間は原則「離職日の翌日から1年間」です。この1年の間に病気で受け取れないと、権利がそのまま消えます。ここを守るのが受給期間延長です。

申請時期は「30日以上働けなくなった日の翌日以降、早期に申請」が原則です。制度上は延長後の受給期間の最後の日まで申請できますが、遅れるほど書類の準備で受給開始がずれ込みます。住所地を管轄するハローワークに、代理人または郵送でも申請できます。

病気が退職理由なら「特定理由離職者」を確認する

ここが見落とされやすい点です。ハローワークの「特定理由離職者の範囲」には、正当な理由のある自己都合離職として「体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により離職した者」が明記されています。該当すると判断されれば、扱いが2つ変わります。

ただし所定給付日数は増えません。特定受給資格者と同じ日数になる「一部の特定理由離職者」は、有期労働契約が更新されなかったケース(範囲の1)に限られ、疾病等による離職はここに含まれないためです。当サイトのシミュレーターで試算するときは、日数は「自己都合」の欄で見て、給付制限の1か月だけを差し引いて考えるのが実態に近くなります。該当するかどうかを判断するのはハローワークなので、離職票の離職理由欄と診断書等を持参して相談してください。
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よくある誤解を5つ、訂正します

申請書のどこで詰まるか

協会けんぽの「健康保険傷病手当金支給申請書」は4ページ構成で、書く人が分かれています。ここを知らずに1人で全部書こうとして止まる人が多い箇所です。

ページ記入する人詰まりやすい点
1〜2ページ被保険者(本人)申請期間、療養のため休んだ期間、報酬の有無、年金・労災の受給状況。退職後の申請では「退職前の仕事の内容」を書く
3ページ事業主勤務状況と給与の支払い状況の証明。退職後は元の勤務先に依頼することになるため、在職中に段取りを決めておくと滞りにくい
4ページ療養担当者(医師)労務不能と認めた期間の記入。診察を受けていない期間は証明が得られないため、通院を切らさないことが実務上の要点

本人記入欄には、金額の調整に直結する3つの設問があります。

退職後に継続給付を受ける人は、健康保険を任意継続にするか国民健康保険に切り替えるかも同時に決めることになります。継続給付は「資格喪失後の給付」なので、どちらを選んでも傷病手当金の受給には影響しませんが、保険料の負担額は大きく変わります任意継続と国民健康保険の比較で、療養中の1年間にどちらが安いか確認しておくと無駄がありません。

療養で収入が落ちた翌年は、住民税や国保の軽減判定に影響します。傷病手当金は非課税所得なので、その分は所得としてカウントされません。翌年の負担がどうなるかは住民税非課税世帯の条件もあわせて確認してください。

まとめ

参考・出典

この記事は2026年8月時点の制度に基づく一般的な解説です。本文の試算は、標準報酬月額の平均=月収・賞与なしという前提を置いた概算であり、実際の支給額は標準報酬月額の等級、支給調整、日数の数え方によって前後します。離職理由の判断(特定理由離職者に当たるか)はハローワークが個別に行います。正確な内容は協会けんぽ・健康保険組合、および最寄りのハローワークにご確認ください。