傷病手当金と失業手当の違いと切り替え方|同時にもらえる?【2026年版】
病気やケガで会社を休み、そのまま退職を考えている人にとって、「傷病手当金と失業手当は両方もらえるのか」「どちらを先に受け取ればいいのか」は大きな不安です。結論から言うと、この2つは同時には受け取れません。役割が正反対だからです。しかし正しい順番で手続きすれば、療養中も退職後も収入の空白をつくらずに給付を受け取れます。この記事では、両制度の違いと、退職後の継続給付・受給期間延長を使った切り替え方を、協会けんぽとハローワークの公表情報にもとづいて解説します。
- 傷病手当金(働けない人向け)と失業手当(すぐ働ける人向け)は役割が正反対で、同時には受け取れない。「療養中は傷病手当金→回復後は失業手当」とバトンタッチするのが基本
- 傷病手当金は1日あたり「標準報酬月額の平均÷30×3分の2」で、支給開始日から通算1年6か月まで。退職後も継続受給するには「退職日まで継続1年以上の加入」など2条件が必要
- 退職後に療養が続く場合は、退職後すぐハローワークで失業手当の「受給期間延長」を申請すれば、受給期間を最長4年まで延ばして回復後に受け取れる
- 傷病手当金と失業手当の違い(早わかり表)
- なぜ同時にもらえないのか
- 傷病手当金の金額・期間と、退職後も受け取れる条件
- モデルケースでみる傷病手当金の受給額
- 退職後の切り替え手順(受給期間延長がカギ)
- よくある失敗と注意点
傷病手当金と失業手当の違い(早わかり表)
まず、2つの制度の違いを整理します。加入している保険も、支える対象も、担当窓口も異なります。
| 傷病手当金 | 失業手当(基本手当) | |
|---|---|---|
| 制度 | 健康保険 | 雇用保険 |
| 対象 | 病気・ケガで働けない人 | すぐ働けるのに職がない人 |
| 窓口 | 協会けんぽ・健康保険組合 | ハローワーク |
| 金額の目安 | 給与の約3分の2(日額) | 離職前賃金の約5〜8割(日額) |
| 期間 | 支給開始日から通算1年6か月 | 年齢・勤続・離職理由で90〜330日 |
なぜ同時にもらえないのか
2つを同時に受け取れないのは、それぞれが想定している状態が真逆だからです。傷病手当金は「療養のため働けない」ことが支給の前提で、失業手当は「働く意思と能力があり、いつでも就職できる」ことが受給の前提になっています。同じ期間について「働けない」と「働ける」の両方を主張することはできないため、どちらか一方しか受け取れません。
そのため、療養中は傷病手当金を受け取り、体調が回復して働けるようになってから失業手当に切り替える——という順番が基本になります。この橋渡しをスムーズにするのが、後述する「受給期間の延長」です。
傷病手当金の金額・期間と、退職後も受け取れる条件
まず傷病手当金の基本を押さえます。支給されるのは、次の4つの条件をすべて満たしたときです。
- 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること(仕事中・通勤中のケガは労災の対象)
- 仕事に就くことができないこと
- 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと(この最初の連続3日間が「待期」)
- 休業した期間について給与の支払いがないこと(一部支給なら差額を補う)
1日あたりの支給額
傷病手当金の1日あたりの金額は、次の式で計算します。
支給開始日以前12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額 ÷ 30 × 3分の2
おおむね給与(標準報酬月額ベース)の3分の2が目安です。標準報酬月額とは、社会保険料の計算に使われる、給与を区切りのよい金額に当てはめたものです。
支給期間は「通算」1年6か月
支給期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月です。令和4年(2022年)1月1日以降は、途中で復職して傷病手当金が支給されなかった期間があれば、その分は差し引いてカウントされます。つまり「働けなかった日」だけを積み上げて1年6か月に達するまで受け取れる仕組みです。
退職後も受け取り続ける条件(資格喪失後の継続給付)
退職して健康保険の被保険者でなくなっても、次の2つを満たせば傷病手当金を受け取り続けられます(資格喪失後の継続給付)。
- 退職日までに、健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あること(任意継続・国保などの期間は除く)
- 退職日の時点で、傷病手当金を受けているか、受けられる状態(待期完了などの条件を満たしている状態)であること
モデルケースでみる傷病手当金の受給額
標準報酬月額の平均額別に、1日あたり・1か月あたり(30日分)のおおよその受給額を計算すると次のようになります。
| 標準報酬月額の平均 | 1日あたり(÷30×2/3) | 1か月あたり(30日分の目安) |
|---|---|---|
| 24万円 | 約5,333円 | 約16.0万円 |
| 30万円 | 約6,666円 | 約20.0万円 |
| 36万円 | 約8,000円 | 約24.0万円 |
たとえば標準報酬月額の平均が30万円の人なら、1日あたり約6,666円、1か月休むと約20万円が目安です。実際には日数や月ごとの日数、支給調整によって前後します。あくまで概算として参考にしてください。
退職後の切り替え手順(受給期間延長がカギ)
療養中に退職し、回復後に失業手当を受け取りたい場合の流れは次のとおりです。ポイントは、退職後すぐに失業手当の「受給期間延長」を申請しておくことです。
- ①退職後も傷病手当金を継続受給:継続給付の条件を満たしていれば、退職後も引き続き傷病手当金を受け取る
- ②退職後すぐ、ハローワークで受給期間延長を申請:病気やケガで引き続き30日以上働けないときは、失業手当の受給期間を延長できる
- ③回復して働けるようになったら失業手当に切り替え:延長を解除し、求職の申込みをして失業手当(基本手当)の受給を始める
よくある失敗と注意点
- 受給期間延長を申請し忘れる:療養が長引くと、失業手当を受け取らないまま1年の受給期間が過ぎてしまうことがある。退職後すぐに手続きを
- 退職日に出勤してしまう:継続給付の「退職日に受けられる状態」の条件を満たせなくなる恐れがある
- 回復前に失業手当を申請してしまう:失業手当は「働ける」ことが前提。療養中に無理に申請しても受給できない
- 労災と混同する:仕事中・通勤中のケガや病気は健康保険の傷病手当金ではなく労災保険(休業補償給付)の対象
まとめ
- 傷病手当金(働けない人向け)と失業手当(すぐ働ける人向け)は同時にはもらえない。療養中→回復後の順でバトンタッチする
- 傷病手当金は1日あたり「標準報酬月額の平均÷30×3分の2」、支給開始日から通算1年6か月まで
- 退職後も傷病手当金を受け取るには「継続1年以上の加入」「退職日に受けられる状態」の2条件が必要
- 療養が続くときは退職後すぐに失業手当の受給期間延長(最長4年まで確保)を申請し、回復後に切り替える